ぶら~りネット探訪

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『日本を貶めた10人の売国政治家』を読んだ

小林よしのりが編集した『日本を貶めた10人の売国政治家』を読んでみました。タイトルが強烈で、話題になりけっこう売れたそうですが内容的はそんなにたいしたことがないと言うかツッコミ所が満載な本です。

小林よしのりが書いている「序論」がまず笑えます。ここでは「売国政治家」の定義や、今なぜこういった問題提起をするのかが述べられています。その辺まではいいのですが、戦前も戦後もマスコミ大衆の「世論」がまともであった例がないと言い切り、政治家を指弾する者が他にいないから小林よしのりやこの本に登場する学者、言論人がその役を引き受けて立ちあがったと語っています。選良意識でやっているのではないとも言っていますが、「大衆やマスコミはバカだからワシらが啓蒙してやる」と言っているようしか読めません。

それから売国政治家は善行と信じて悪行をなす人たちで、オウム信者日本赤軍の「純粋まっすぐ君」と同じだと言っています。私はここで名前があがっている政治家を支持しているわけではありませが立場が違えば見え方が違うのは当たり前の話で、中国やアメリカから見たら、小林よしのりは反中、反米の「純粋まっすぐ君」に見えるじゃないですか?保守や右翼的な考えを持たない日本人から見ても同じことが言えると思います。

この本は、愛国か売国か、右翼か左翼か、善か悪かといった二項対立の単純な図式を示して、政治や思想を矮小化しているようにしか見えません。小林よしのり売国政治家と批判している小泉元首相が「郵政選挙」で使った手法やブッシュ前大統領がイラク戦争に突入するときに取った手法変わりません。

学者、言論人20人にアンケートを取って、売国政治家10人を選んでいるのですが、このアンケートに答えている学者、言論人と言われる人のほとんどが保守、右寄りの思想の持ち主で小林よしのりに近い人ばかりというのが笑えます。産経新聞、正論、SAPIO、なくなってしまった「わしズム」などに書いていた人たちです。なぜか骨法創始師範の堀辺正史もアンケートに答えています。それならば極右な思想で知られる佐山聡前田日明なんかにもアンケートに答えてもらえば良かったのにと思いました。

小林よしのり勝谷誠彦長谷川三千子などが登場する座談会もある意味非常に面白いものになっています。特に勝谷誠彦の発言が素晴らしい。小泉元首相が自民党内で自分に反対する者を抵抗勢力として排除した手法が文化大革命毛沢東が使った手法と同じだと非難していますが、この本でやっていることも同じような事だと思いますね。三角帽を被せる代わりこういった本を出したり、紅衛兵のかわりにはネット右翼を煽ったりしているように見えます。

後半の10人の売国政治家の検証も罪状を並べ断罪しているだけで、それほど面白いものではありません。別に私はここで取り上げられている政治家を支持しているわけではありませんがこの検証は底が浅すぎます。

この本全体を通して言える事ですが、自分たちの嫌いな政治家の悪口を並べているだけという印象が強いですね。「どうして売国政治家が生まれるのか?」、「売国政治家を支持している人はどういった人たちなのか?」、「どうして売国政治家がいなくならないのか?」こう言った問題の検証や研究が必要ですね。

前回の選挙でもこの本に登場するワースト10に選ばれた現役の政治家は選挙で当選しています。これはどういうことなんでしょうか?売国政治家に投票する売国選挙民がたくさんいるということなのでしょうか?選挙の結果は全て正しいとはいいませんが、やはりこういった政治家が選挙になぜ強いかを研究して欲しいところです。

東京裁判史観を捨てて、明治以降の日本を全て肯定すれば、これからの日本は全て安心だという保守の考え方はどうにかならないのかと思います。経済的利益よりも誇りが大事という考え方も理解できませんね。愛国心でお腹いっぱいになったり、お金が儲かったりすればいいんですけどね。小林よしのり勝谷誠彦みたいな人はこの本みたいにマスコミでプライドだ愛国心だ言っていればお金が入ってくるからいいですよね。

余談ですが、野中広務のことを主演男優賞はだめだけど助演男優賞は取るヒース・レジャーみたいだと長谷川三千子が言っているのが笑えます。この人は恐らく 「ダークナイト」もヒース・レジャーが出演した映画も見たことがないと思われます。

日本を貶めた10人の売国政治家 (幻冬舎新書)
日本を貶めた10人の売国政治家 (幻冬舎新書)