『ウルトラマン』放送開始60周年を記念して制作された、塚越隆行監督のドキュメンタリー映画『THE ORIGIN OF ULTRAMAN』を見ました。
内容の2/3くらいは既に知っている話でしたが、残り1/3は新鮮でした。特に印象に残ったのは、バルタン星人の初登場回についての考察です。
映画は、ウルトラマンに影響を受けたギレルモ・デル・トロ、ニコラス・ウィンディング・レフン、庵野秀明、樋口真嗣、是枝裕和といった映画監督や、ゲームデザイナーの小島秀夫へのインタビューを軸に構成されています。当時の関係者への証言や『ウルトラマン』本編の映像も随所に挿入されており、アラシ隊員を演じた毒蝮三太夫(石井伊吉)のインタビューも収録されていました。
成田亨デザインのウルトラマンのアルカイックスマイルは広隆寺の弥勒菩薩から着想を得たという話は、みうらじゅんがかなり前から語っていたので、正直「またこの話か」という印象でした。
一方で、この映画では意図的なのか触れられていない部分もいくつかあります。
まず気になったのが実相寺昭雄についてです。テロップでは名前が出るものの、ナレーションではほとんど触れられません。『怪獣墓場』でジェットビートルに乗るアラシ隊員とイデ隊員を真下から捉えた、いわゆる「実相寺アングル」は紹介されるのですが、庵野秀明のインタビューでも実相寺昭雄の名前は一切出てきませんでした。
また、円谷英二は「日本特撮の父」、あるいは「ウルトラの父」と呼ばれる存在ですが、『ハワイ・マレー沖海戦』をはじめとする戦時中の国策映画に携わり、戦後は公職追放となった人物でもあります。しかし、本作ではその経歴には全く触れられていません。
『ハワイ・マレー沖海戦』はプロパガンダ映画という側面が強い作品ですが、フィルムを接収したアメリカ軍は、その特撮技術の高さに驚いたといわれています。一方で、日本軍がフィリピンで接収したウォルト・ディズニーの『ファンタジア』を見た関係者が、日本の敗戦を確信したという逸話も残っています。
本作では『ハワイ・マレー沖海戦』には触れず、代わりに最近イギリスで発見された、円谷英二が1930年代に特撮を担当した『竹取物語』のフィルムを紹介していました。しかし、円谷英二の光の部分だけでなく影の部分にも踏み込んでこそ、ドキュメンタリーとしての深みが生まれるのではないかと思います。
それでも、円谷英二や円谷一の肉声、金城哲夫が実際に動いている映像、そして『ウルトラマン』撮影風景の貴重な記録を見ることができたのは大きな収穫でした。ニコラス・ウィンディング・レフンのインタビューも興味深かったです。
私は『ウルトラマン』を再放送で何度も見ているつもりでしたが、それはほとんど子供の頃の記憶でした。今回、この映画の中でバルタン星人初登場となる第2話「侵略者を撃て」を見直してみると、子供の頃とはまるで違う作品に感じられました。
映画では脚本・監督を務めた飯島敏宏の過去のインタビューも紹介され、是枝裕和がこのエピソードについて語っています。
第2話「侵略者を撃て」は、
・バルタン星人は地球侵略者である一方、故郷を失った20億人もの難民でもある。
・科学技術は地球人をはるかに上回る。
・対応を協議する会議では、ムラマツ隊長は交渉を提案するものの、防衛軍の参謀たちは反対し、核攻撃を主張する。
・しかし最終的には地球との共存はかなわず、ウルトラマンによって倒される。
という非常に複雑な構図になっています。
ラストは、バルタン星人の宇宙船が爆発する場面で幕を閉じます。子供の頃は単純な勧善懲悪として見ていましたが、大人になって見返すと非常に後味の悪い結末です。
ウルトラシリーズには、こうしたトラウマ級のエピソードが少なくありません。『ウルトラセブン』の「ノンマルトの使者」や、『帰ってきたウルトラマン』の「怪獣使いと少年」は、その代表例でしょう。
この映画では最終回「さらばウルトラマン」も取り上げられていました。
私がハッとしたのは、ゼットンを倒すためのペンシル爆弾をアラシ隊員に託すのが、平田昭彦演じる岩本博士だったことです。このシーンは何度も見ているはずなのに、今回初めてその意味に気づきました。
平田昭彦といえば、『ゴジラ』ではオキシジェン・デストロイヤーを開発した芹沢大助博士を演じています。究極兵器を生み出した責任から、その秘密を未来に残さないため、自らゴジラと運命を共にした人物です。(レジェンダリー版 GODZILLAで渡辺謙が演じたのは「芹沢猪四郎」)
一方、『ウルトラマン』では、人類最後の切り札であるペンシル爆弾をアラシ隊員に託し、ゼットン撃破への道を開く岩本博士を演じています。
考えてみると、平田昭彦は日本特撮史を代表する二つの作品で、それぞれ「怪獣を倒す決定的な兵器」に関わる科学者を演じていることになります。子供の頃は全く気づきませんでしたが、改めて見ると実に味わい深いキャスティングです。
余談ですが、平田昭彦は『レインボーマン』では死ね死ね団の首領・ミスターKも演じています。正義の科学者から悪の組織の首領まで演じてしまうあたりも、この俳優の懐の深さを感じさせます。
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