ザック・スナイダー監督作『エンジェルウォーズ』を見ました。
この映画の予告だけ見ると金髪のネーちゃんがセーラ服を着て日本刀を振り回して戦う、キワモノ、バカ映画にしか見えません。『キック・アス』や『キル・ビルvol.1』みたいな映画は大好きなので、キワモノ、バカ映画でもかまわないと思ってこの映画を見ました。
実際に見てみたら、この映画はただのバカ映画ではなく、鬱な感じのバカ映画で驚きました。中盤までの展開はほぼ予想通りだったのですが、ラストはかなり意外で、『カッコウの巣の上で』なのかと思いました。ベイビードールはマクマーフィー(ジャック・ニコルソン)で、スイートピーはチーフなのでしょうか？精神病院が舞台でロボトミー手術が云々と『カッコウの巣の上で』ですね。
とか何と言っても、この映画の目玉は明らかに日本のアニメやゲームの影響と思われる戦闘シーン。日本の寺で巨大な鎧武者のロボットとベイビードールが戦うところが凄かったです。特に鎧武者がなぜかガトリングガンをブッ放すところが、バカバカしいけど感動しました。
この映画の設定は『インセプション』にも似ていて、話が展開する世界が階層構造になっています。第1層が現実の世界、ベイビードールが入院させられる精神病院。第2層は売春宿。第3層ベイビードールが売春宿(精神病院)から脱出するためのアイテムを得るためバトルフィールド。ちなみに、『ダーク・ナイト』、『インセプション』と『エンジェルウォーズ』はレジェンダリー・ピクチャーズという全く同じ製作会社が作っています。
予告ではレッド・ツェッペリンの『When The Levee Break』が使われていましたが本編ではこの曲は使われていません。その代わりベイビードールたちが第一次世界大戦のドイツ軍と戦うシーンではツェッペリンの飛行船が登場します。
ベイビードールたちは時限爆弾を積んだ列車の時限爆弾を解除するミッションも命じられます。ベイビードールたちは列車の中に突入し、ターミネーターみたいなロボットと闘いながら時限爆弾の解除を試みます。敵のターミネーターみたいなロボットと書きましが、銀色ののっぺら坊のようなロボットの顔はペプシマンを思い出しました。列車が向かうのは未来都市で、この未来都市のデザインは私には『攻殻機動隊』のニューポートシティ(新居浜市)のように見えました。
主人公のベイビードールを演じるエミリー・ブラウニングは凄い美人とか可愛いわけでも、ナイスなバディというわけありませんが、とても魅力的でした。特に前半で見せる今にも泣き出しそうな顔がたまりませんでした。美人担当はスイートピーのアビー・コーニッシュ、ボーイッシュ担当はロケットのジェナ・マローンでナイスなバディ担当はブロンディとアンバーのヴァネッサ・ハジェンズ、ジェイミー・チャンということになっています。
この映画はサウンドトラックもいいんですよ。メインのテーマとなっているのはビョークの『Army of Me』でこの曲のみ原曲が使われています。他の曲はこの映画のためのカバーバージョンです。冒頭のベイビードールが継父に精神病院に入れられるシーンではユーリズミックスの『Sweet Dreams 』、ジェファーソン・エアプレーンの『White Rabbit』、ビートルズの『Tomorrow Never Knows』などが使われています。
エンドロールで『Army of Me』が終わった後には、ロキシーミュージックの『 Love Is the Drug』がかかります。歌っているのはブルーとマダム・ロゴスキーを演じたオスカー・アイザックとカーラ・グギノ！このエンディングにはブッたまげました。他の主要キャストも本編とは全く違うメイクや衣装で踊っていました。(ベイビードールだけははっきりと判別出来ませんでした) 本編の最後には熱いメッセージで締めておきながら、エンドロールのこのふざけ方は笑えました。「映画は所詮、虚構ですよ」という事なんでしょうか？
邦題の『エンジェルウォーズ』(原題は『Sucker Punch』)というのは正直どうか思いました。それ以上にほとんどの劇場が吹き替え版での公開というのはどうなんでしょうか？私は吹き替え版と字幕版の両方を見ました。3D映画でも説明的な台詞が多いわけでもないのに吹き替え版がほとんどというのは理解に苦しみます。『ソーシャル・ネットワーク』みたいな映画の方が吹き替えで見たほうが見やすいのではと思います。でロードショー公開中に2回同じ映画を見たのは『ダーク・ナイト』以来です。2回とも客は入っいませんでした。アメリカでも興行成績は散々で、酷評されているそうです。
