ぶら~りネット探訪

音楽、競馬、映画などについて非常にテキトーにダラダラと綴っていくブログでございますですよ。

堀井憲一郎の『青い空、白い雲、しゅーっという落語』を読んだ

「序」でこの本は落語の本ではなくて「落語を見に行く」という小さな旅をしたときの出来事を綴った本と 堀井憲一郎は書いていますが、落語の本だと思います。 堀井憲一郎は年に400席も落語を見るだけあって、浅草演芸ホールや上野鈴本、末広亭などの寄席はもちろん、芝浦の公民館、円楽党お江戸両国亭横浜にぎわい座日本橋や上野の蕎麦屋の3階など色々な所に出かけて落語を見ています。 確かに落語そのものより、落語が演じられている空間やそこで起こったエピソードについて書いているような感じもします。池袋演芸場で泥酔した客を高座の上から啖呵を切って叩きだした入船亭扇辰の話はなんだか芝居かドラマのような感じですね。 『鰻の幇間』を演じている「セコ文楽」(9代目桂文楽)の頭に蝿が止まり、最前列で見ていたおばちゃんが気が狂ったように笑っていた話はなんだか奇跡的な瞬間という感じで笑えます。「セコ文楽」という呼び方はちょっと可哀想なので「ペヤング文楽」くらいにしてあげて下さい。 柳家小三治の上野鈴本での独演会に行ったら、落語は1席もやらずに小三治がひたすら歌を歌うだけの独演会だったというのも凄いですね。さすがにホリイは3曲目で席をたったそうです。女性客の1人は「ほんと『寝床』ねえ」と言っていたそうです。 人間国宝桂米朝の噺が途中で何度もループしたというのは『蜘蛛駕籠』のあら熊さんみたいですな。しまいには高座で酒まで飲んでいたそうです。 後半の10人の落語家のインタビューが収録されています。なぜか、とんでもない場所で落語をやった話をする落語が何人にもいるのが面白いですね。特に志の輔が凄い。海の上でやったり、志の輔を可愛がってくれていた富山のガス会社の社長の葬儀で落語をやったりしています。このときにはさすが落語のネタをやるわけにはいかないので故人との思い出話を話したそうです。しかし、笑いはしっかりもしっかりと取ったそうです。 春風亭昇太は相変わらず若い頃に地域寄席で客の年寄りに虐められた話をしていました。昇太は落語を投げた経験はほとんどないそうなのですが、学校寄席であんまり誰も聞いていないので切れて投げてしまったそうです。後に昇太がラサール石井と二人芝居をやったときのアンケートに「私の高校に落語をやりにきたときに、真面目にやらなかったのであなたが嫌いでした」と書かれたものがあったそうです。何とも味わい深いものがあります。それ以来、昇太は落語を投げていないそうです。 三遊亭円丈の弟子の三遊亭白鳥はよく知らないのですが、とんでもない人みたいですね。『落語のピン』で談志を怒らせた話が笑えます。前座で上がって新作落語で笑いを取った白鳥に対して「こんな芸で笑う客が許せねぇ」と怒った談志は収録現場から暫く姿を消してしまったそうで、帰ってきた談志に白鳥が謝罪すると「お前が悪いんじゃない、お前の芸を笑う客が悪いんだ」と言ったそうです。 どうでもいい話ですが、柳家喬太郎立川志らく三遊亭白鳥の3人は1963年生まれで学部は違いますが日大出身なんですね。 青い空、白い雲、しゅーっという落語
青い空、白い雲、しゅーっという落語