ぶら~りネット探訪

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「歴史のかげにグルメあり」を読んだ

黒岩比佐子の「歴史のかげにグルメあり」を読んでみました。

最近の新書は奇抜なタイトルで読者の気を引こうとする傾向が強いですね。「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?」とか、「お金は銀行に預けるな」とか。「お金は銀行に預けるな」は銀行に金を預けるかわりに投資信託を買えという内容らしいですね。そんな中で 「歴史のかげにグルメあり」と言うタイトルは意外にストレートですが、なぜか私はこのタイトルにひかれて読んでしまいました。

幕末から明治にかけての歴史的な出来事や人物を料理という切り口で見てみるというのがこの本のコンセプトです。黒船でやってきたペリーを江戸幕府はどうもてなしたか、明治天皇による皇室外交や鹿鳴館での食事はどうであったとか、政商であり帝国ホテルを建てた大倉喜八郎のこだわり、日露戦争の旅順攻略に成功した児島源太郎がシャンパンファイトを日本人として初めて行ったなどが語られています。

西園寺公望天皇の料理番(堺正章主演でドラマになっていた)だった秋山徳蔵産地偽装した鰻を見破った話が私は好きですね。また、西園寺公望は首相在任中に当時の人気作家達(文士)を招いて宴を行ったが、招待を受けていた夏目漱石坪内逍遥二葉亭四迷の三人は招待を断ったという話もいいですね。

主に政治や戦争などに絡むエピソードが多いのですが、村井弦斎のエピソードは中でも異色ですね。村井弦斎はジャーナリストであり小説家で「食道楽」という食をモチーフにしたベストセラー小説を書いたり、「黄禍論」に対抗するために自費で「HANA」という小説を海外で自費出版したりとなんとも不思議な人物だそうです。「食道楽」はヒロインが色々な料理を作っていく話としか説明されていないのがちよっと残念です。明治時代の「美味しんぼ」とでも考えればいいのでしょうか。「HANA」については詳しくしく書かれていてます。ロシア人捕虜の男とアメリカ人の男に思いを寄せられる「HANA」という日本人女性の話で、「HANA」の父親は料理で病気を治す料理療法を研究する「食医」で「HANA」も料理療法を研究し、やがてアメリカ人のコナーと結ばれアメリカに渡り、日米友好の懸け橋となるという内容らしいです。

大逆事件で死刑になった幸徳秋水の話も結構、人間臭さいところがよかったですね。菜食主義の研究をし、実践してみたものの完全には菜食主義者にはなりきれなかったり、遊郭にも通ったり、女にだらしなく、そのことがある意味で大逆事での逮捕を呼び込んでしまったと書かれているところが何とも言えません。最終章の幸徳秋水は「歴史のかげにグルメあり」でもありますが元ネタである「歴史のかげに女あり」にもなつているような気がします。

歴史のかげにグルメあり (文春新書 650)