学者芸人のサンキュータツオの随筆集『これやこの』を読んでみました。サンキュータツオが書いた本をよむのは初めてです。
サンキュータツオがキュレーターをしている『渋谷らくご』の高座に上がっていた柳家喜多八、立川左談次の最後の日々について書かれのが表題作の『これやこの』。正直、この随筆は重い。二人の落語家の闘病ドキュメントなのでしょうがないのですが、坊主めくりでいきなり蝉丸を引いててしまったような戸惑いを感じましたTBSラジオの『問わず語りの神田伯山』に出演している「笑い屋の重藤くん」が出てきたのにも驚きました。
この随筆集はサンキュータツオが死に別れた人たちの思い出を綴ったものを集めたねのになっています。父親、祖父、祖母、叔母さん、従兄弟、同級生、学校の先生、お笑いのライブで裏方をやってくれた人、アルバイト先の人などなど。
この随筆集を読んで思い出したのはサンキュータツオも出演もしているTBSラジオ『東京ポッド許可局』の『忘れえぬ人々』のコーナーです。この随筆集はサンキュータツオにとっての『忘れえぬ人々』なのかもしれません。
特にバイト先で出会った人のエピソードは『忘れえぬ人々』感が強くなっています。中野のビジネスホテルのツインの部屋に2年以上も泊まっているしている老人の話はなんとも言えない味わいモヤモヤしたものがありました。都会のビジネスホテルが姥捨て山になっているというディストピア感がたまりません。矢崎滋が地方のビジネスホテルで隠遁生活をしているというニュースを読んだ後だったので余計に印象に残りました。
京都アニメーションの放火事件にショックを受けて鬱になっしまったサンキュータツオが都市対抗野球でのJFE東日本の快進撃で活きる力を取り戻す最後のエピソードは山際淳司のスポーツノンフィクションを読んでいるような気分になりました。
横浜大洋ホエールズ、横浜ベイスターズ、横浜DeNAベイスターズを見続けてきたサンキュータツオ。その中で投げ続けきた三浦大輔への思いを綴った部分も特に横浜ファンではない私もグッとくるものがありました。
社会人野球のJFE東日本を経て横浜DeNAベイスターズに入り、再びJFE東日本に復帰した須田幸太投手のことはこの本で初めて知りました。今では選手としてプロからアマチュアに復帰する選手がいることに驚きました。
誰もが知っている選手ではない須田幸太という選手のこれまでの選手生活と現在の活躍を丁寧にそして熱く綴っているところに心を動かされました。
これやこの サンキュータツオ随筆集 (角川学芸出版単行本) - サンキュータツオ