ぶら~りネット探訪

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『はじまりのみち』を見た

原恵一監督、加瀬亮主演の『はじまりのみち』を見ました。

『はじまりのみち』は映画監督・木下惠介生誕100年プロジェクトの1つとして製作された映画で、木下恵介の戦時中のエピソードをモチーフにしています。私は木下恵介監督の映画は1本も見たことがありません。『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』を撮った原恵一の初の実写映画ということで見ることにしました。

戦意高揚のため作られた『陸軍』という映画のラストシーンが女々しすぎると軍からクレームがつき、次回作を撮ることをできなくなった木下恵介は松竹に辞表を出して、故郷の浜松に帰ってしまう。戦局は悪化し浜松も大規模な空襲に見まわれ、木下家は山間部に疎開することになる。しかし、母のたまは脳溢血で寝たきりでバスに長時間揺られるのは無理。惠介とその兄、そして便利の三人で母をリヤカーに乗せて約60キロの道のりを歩いてくというお話。

加瀬亮が田中裕子の顔を拭くシーン、濱田岳がカレーライスを食べる仕草や白魚のかき揚げをつまみにビール飲む仕草は確かに素晴らしいのですが、みなさん褒めているので私はあまり詳しくは触れません。でも、濱田岳野原しんのすけがそのまま大人になったようなキャラクターが素敵で笑えました。

木下恵介が『二十四の瞳』の着想を得るシーンに宮崎あおいは登場します。無邪気に軍歌を歌う子どもたちと宮崎あおいの浮かない表情の対比が非常に印象的でした。おそらく宮崎あおいが演じる学校の先生の家族あるいは恋人が出征していくことが暗示されているシーンで、このあと問題の『陸軍』ラストシーンに繋がっていきます。

『陸軍』ラストシーンは「女々しい」というよりも私には「くどい」と感じられました。田中絹代が街頭を行軍して行く兵隊さんの中から息子を探そうと走り続けるシーンが延々と続きます。もう逢えなくなってしまうかもしれない息子の姿を一目見ようとする母親の必死さは確かに伝わってきます。

脳溢血で身体も言葉も不自由な母親役を演じた田中裕子の演技も凄いものがありました。特に必死に息子に語りかけるシーンが非常に印象的でした。田中裕子は沢田研二と結婚してからは目立った活躍がなかった気がします。『もののけ姫』のエボシ御前くらいしか思いつきません。『おしん』は泉ピン子の方が思い浮かぶ様になってきたような気がします。

この映画で登場人物たちが喋る方言がドラマの『みんな!エスパーだよ!』で喋っている方言に近いような気がしました。『はじまりのみち』で喋っているのは遠州弁『みんな!エスパーだよ!』で喋っているのは三河弁で違いはあるらしいのですが、私には同じように聞こえました。宿屋の夫婦である光石研濱田マリが喧嘩をするシーンは全く何を喋っているのか分からず落語の『金明竹』の口上を聞いているような気分になりました。

ラストシーンの前に木下恵介監督作品がダイジェトで流れます。『カルメン故郷に帰る』の画面の色が今の映画の画面の色と全く違うので驚きました。『楢山節考』と言えば1983年に今村昌平カンヌ映画祭パルム・ドールを獲った方を思い浮かべますが木下恵介も撮っていたんですね。

『破れ太鼓』という映画で男(おそらく阪東妻三郎)がカレーライスを食べるシーンがあって、便利屋の濱田岳がカレーライスを食べる仕草はこのシーンのオマージュなのかと思いました。

6月17日の『高田文夫ラジオビバリー昼ズ』にRHYMESTER宇多丸がゲストで出演していて、ラジオの後に東劇でこの映画を見ると言っていました。このとき、宇多丸は「今から食べに行きたいカレー屋ベスト3」みたいなことも喋っていました。宇多丸がカレー好きなのは知っていたので「またカレーネタか」と思っていました。しかし、『はじまりのみち』を見てみたらビックリ!しっかりと『はじまりのみち』や木下恵介とリンクしていていました。

はじまりのみち  映画パンフレット 監督 原恵一 加瀬亮、田中裕子、ユースケ・サンタマリア、濱田岳