ぶら~りネット探訪

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鈴木邦男の『愛国と憂国と売国』を読んだ

民族派右翼、鈴木邦男の『愛国と憂国売国』を読んでみました。

民族派右翼の鈴木邦男と書きましたが、最近の鈴木邦男の本を読むとあまり右翼の人には思えなくなっています。特にこの本での憲法につていの考え方を読むと護憲派の左翼といっても差し支えないような方向に進んでいます。

一番印象的なのは「序章」での末松太平という二・二六事件関係者で昭和維新の活動家が35年前に「維新運動は公害撲滅運動に絞れ」と語ったエピソードです。山紫水明、天壌無窮の祖国を守る、分かりやすく言うと日本の豊かな自然を当時問題になっていた公害から守ることが何よりも大事ということです。

35年前に鈴木邦男末松太平のこの言葉を聞いても天壌無窮なんて死語で、ピンと来なかったが、2011年3月11日の東日本大震災福島第一原発事故を受けて末松大平の言葉の意味がやっと理解できたそうです。

原発事故によって日本の国土が汚染され、失われていくことは領土問題と同じ事と捉えているところも非常に興味深く感じました。鈴木邦男は実際に去年3回、「右から考える脱原発集会&デモ」を行なっているそうです。

第一章は憲法の話で、第二章から第四章にかけては「右翼青年鈴木邦男」がどのように作られ、どんな右翼活動をしていきたが語られています。第五章は怪物弁護士、遠藤誠佐高信について、第六章は三島由紀夫について書かれています。

第二章から第四章の若き日の鈴木邦男の話が特に面白いですね。映画『東京裁判』の試写会で偶然出くわした共産党野坂参三に何もできなかったことをいまだに悔やんでいたり、井上ひさしに脅迫電話をかけたけど逆にやり込めらてしまったエピソードは笑えます。井上ひさしは戦前の教育を受けているので歴代の天皇の名前と教育勅語を空で言えたそうです。

余談ですが電撃ネットワークギュウゾウも元右翼で『宝島30』の皇室報道に抗議の電話をしたら、『宝島30』の編集者に逆にやり込められたというエピソードを聞いたことがあります。その『宝島30』の編集者は町山智浩だったとか。

三島由紀夫について書かれていることも面白いですね。三島由紀夫は「愛国心」という言葉が嫌いだったこと、三島由紀夫の「改憲案」では徴兵制には反対しているが国防の権利は否定せず、女性天皇も肯定しているところ、司馬遼太郎が焚きつけた坂本竜馬ブームに対して否定的だった所が特に興味深いものがありました。

三島由紀夫が自決した年に残した、「このまま行ったら『日本』はなくなってしまうのではないかという感を日ましに深くする。日本はもうなくな、その代わりに、無機的な、からっぽな、ニュートラルな、中間色の、富裕な、抜け目がない、ある経済大国が極東の一角に残るのであろう」というコメントを引用し、三島由紀夫は40年以上前に未来を予見し、我々は当時からずっと三島に負け続けていると書かれています。

残念ながら一点だけ三島の予想は外れています。それは日本がもう「富裕な、抜け目がない経済大国」ではなくなりつつあることですね。

原発の問題も確かに重要ですが14年連続で自殺者が3万人を超えているという問題は右翼や左翼の人たちはどのように考えているかも聞いてみたいですね。1日あたり約90人、約16分に1人が自殺している計算になるそうです。どう考えても異常な事態ですが政治家も官僚も思想家も宗教家も票や利権にも関係がないためかこの問題には関心が低いですね。GKB47の問題、あれは悪い冗談にしか思えません。

愛国と憂国と売国 (集英社新書)
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