ぶら~りネット探訪

音楽、競馬、映画などについて非常にテキトーにダラダラと綴っていくブログでございますですよ。

『ラーメンと愛国』を読んだ

TBSラジオ『dig』でラーメンを特集していた回に『ラーメンと愛国』の著者、速水健朗が出演していたのがきっかけでこの本の存在を知り興味を持ち、読んでみました。

正直、ラーメンにはほとんど興味はありません。『愛国』とい言葉にひかれて読んでみたん感じです。私自身は右寄りの考えという訳ではありません。中国から伝わったラーメンと愛国という言葉のミスマッチ感にもひかれました。

実際に読んでみると、『ラーメンと愛国』と言うよりも、『ラーメンで語る近代日本史』と言った方がしっくり来るような本だと思います。の新書としてはかなりボリームがある本ですが、面白くて、読み易いのであっという間に読んでしましいました。

「歌は世につれ、世は歌につれ」という言葉がありますが、「ラーメンは世につれ、世はラーメンにつれ」と思えるほど戦後の日本とラーメンの関係は時代とともに変化していったことがこの本で分かります。

ラーメンのスープ、具の変化はもちろん、屋号、内装、店員の服装も時代とともに変化しています。現在の定員の服装は作務衣あるいは黒か紺のTシャツ、頭にはタオルかバンダナというのが主流だそうです。

90年代以降のラーメンブームから作務衣が増え始め、店内には店主が書いた「ラーメンポエム」が貼られているそうです。この頃からラーメン屋の右傾化と言うか国粋主義的傾向が始まったそうです。源流は麺屋武蔵というラーメン屋だそうです。この辺はまったく知りませんでした。

渡る世間は鬼ばかり』、『ふぞろいの林檎たち』、『ガラスの仮面』でのラーメン屋の記号的な意味について書かれているところも非常に面白かったですね。そう言えば、中島唱子が『ふぞろいの林檎たち』と『渡鬼』の両方に出てい事をこの本で改めて思い出しました。

ある時代まではラーメン屋というのは貧しさやカッコ悪さの象徴でした。そう言えばいつのまにかそういう風潮は消えてしますね。この本ではいつからそういった風潮が亡くなったかは明確には書かれていません。

インスタントラーメンの父、安藤百福の話ももちろん面白いものなっています。戦後の闇市支那そば屋の屋体に行列する人々を見た安藤百福は「工業製品としてのラーメン」を作ることを思いつき、チキンラーメンカップヌードルを開発していきます。

「T型フォードとチキンラーメン」という章でアメリカの大量生産技術がどのように確立され、それが戦後の日本に伝わったかが書かれています。この章ではラーメンのことにはほとんど触れられいません。

太平洋戦争の日本の敗北の原因は国力の差だけではなく、当時の日本では大量生産の技術が低くいことと、日本の兵器開発が「一点物至上主義」にとらわれていた事も原因の一つだと書かれています。

「一点物至上主義」は現在でも日本人の心に根強く残っていると書かれていて、その例としてガンダムをあげている所が面白かったです。ガンダムをはじめとするロボットアニメの主役メカは常に一点物であるのに対してアメリカのスター・ウォーズルーク・スカイウォーカーは量産型のXウイング戦闘機で戦うという対比はちょっとバカバカしいけど妙な説得力がありました。

マクロスバルキリーは一点物ではなかった気がします。マクロスは例外かな?

田中角栄日本列島改造論がもたらしたファスト風土化とご当地ラーメンの関係について書かれている部分も興味深ものがありました。ご当地ラーメンを好意的に「偽史」、「捏造」と解説して部分もなるほどと納得させられました。

大瀧詠一の『びんぼう』という曲の歌詞について解説していたのは驚きました。歌詞にラーメンが出てくる曲を集めてみるのも面白いかもしれません。こまどり姉妹の『涙のラーメン』とシャ乱Qの『ラーメン大好き小池さんの唄』くらいしかすぐに頭に浮かびませんでした。

ラーメンと愛国 (講談社現代新書)
ラーメンと愛国 (講談社現代新書)