ぶら~りネット探訪

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『県警対組織暴力』を見た

銀座シネパトスの『生誕70年 川谷拓三映画祭・3000回殺された男の美学』の中で上映されていた、深作欣二監督、菅原文太主演の『県警対組織暴力』を見ました。

昔の東映のヤクザ映画を見るのはほとんど初めてでした。1975年の映画ですが、今見ても衝撃的で娯楽映画としてもダレたり、飽きたりすることなく最後まで楽しむことが出来ました。

架空の地方都市の石油コンビナート建設の利権を巡るヤクザの抗争とヤクザと警察の癒着を描いた映画です。登場するヤクザも警察官も全員悪人というところは北野武の『アウトレイジ』に似ています。

菅原文太は刑事ですが、ヤクザの松方弘樹とズブズブの関係で、見た目も完全にヤクザです。菅原文太を中心とするマル暴と松方弘樹の組対市長、警察上層部と元ヤクザで市議会議員の金子信雄成田三樹夫の組という対立の図式で話が展開していきます。単純な警察対ヤクザの構図ではありません。

とにかく昔の東映の役者の個性というかアクの強さが凄いのに驚きます。主演の菅原文太松方弘樹はもちろんですが、川谷拓三や金子信雄室田日出男の濃さも強烈でした。特に金子信雄がクラブのホステスの体を撫でまわすシーンが実に直接的でいやらしく印象に残りました。

田中邦衛は1シーンしか登場しないのにキャラクター設定の特殊さと田中邦衛の存在感の独特さで異彩を放っていました。

逆に山城新伍の刑事役は非常に印象が薄くて、見せ場は幼なじみの室田日出男演じるヤクザとの絡みと金子信雄に札束をねじ込まれるシーンと殺されるシーンくらいでした。画面全体のトーンに山城新伍自身がとまどっているような印象でした。確か生前に山城新伍はヤクザ映画は苦手だったと語っていたような記憶があります。

後に3代目の水戸黄門を演じた佐野浅夫のベテラン刑事もいい味を出していました。佐野浅夫と言うとどうしても黄門様を始めとして好々爺なイメージしかなかったので、間男をやったりして生々しい役で驚きました。

佐野浅夫を柔道の投技で投げまくるキャリア警察官役の梅宮辰夫も良かったですね。梅宮辰夫の棒読みのセリフ回しは昔からだったというが分かりました。しかし、棒読みの固い演技がキャリア警官という役柄のはまっていてこの映画では違和感はさほどありませんでした。

ヤクザとの癒着を断ち切れと菅原文太佐野浅夫に命令する梅宮辰夫は一見、正義感が強く、この映画の中では唯一まともな人物に見えますが、ラストシーンではとんでもないドンデン返しが待っています。「さあ、今日も仕事始めの体操をやろう!」という梅宮辰夫の棒読みのセリフは最高でした。

一見、普通ぽい人、人のよさそうな人が実は一番悪い人で最後には生き残るというのは北野武の映画に影響を与えている気がします。実際、『その男凶暴につき』は最初は深作欣二が監督で撮影も途中まで深作欣二がやっています。

ヤクザ映画なので暴力が中心に描かれていますが、たまにトボけたようなセリフやシーンがはさまっていて、場内に笑い声が上がっていました。凄惨な内容なのにときたま、場内に笑い声が上がるのは『冷たい熱帯魚』でもありました。

ちなみに私は柳家喬太郎新作落語の中で『県警対組織暴力』というタイトルが出てきていたのでこの映画の存在を知りました。一度聞いたらなかなか頭から離れないタイトルです。

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