ぶら~りネット探訪

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『文化系のためのヒップホップ入門』を読んだ

ラッパーの宇多丸が『小島慶子キラ☆キラ』で紹介していた『文化系のためのヒップホップ入門』を読んでみました。

この本はフリーライター長谷川町蔵と大学教授の大和田俊之の対談で構成されています。現代アメリカの黒人文化の象徴とも言えるヒップホップとは何かという事を実に分り易く解説されています。

比喩と言うか例え方がバカバカしくて面白くて笑えるのがこの本の素晴らしいところです。特にヒップホップを日本の漫画や芸能界で例えているところが笑えます。手塚治虫は漫画界のJBというのはかなり強引ですが笑えました。「ビートたけしアイス・キューブほぼ同一人物説」もけっこういい線いっていると思いました。

クール・ハークのブロック・パーティージャイアンリサイタルと言ったりするところまでは分かりましたが。アフリカ・バンバータを『湘南爆走族』の江口洋助みたいと言っているところは分かりませんでした。

基本的には1970年代後半のニューヨークのブロンクスブロック・パーティーから生まれたヒップホップの歴史を時系列で辿って行く流れになっています。

Run-D.M.C.の『Walk This Way』でヒップホップを知った私は、パブリックエネミーやデ・ラ・ソウル、アイス-T、N.W.A.あたりまでリアルタイムで聞いていました。

80年代後半から90年代の始めにかけて、サンプリングのネタにはJBとともにP-Funkが多く使われていました。P-FunkのアルバムがCDで再発され、P-Funkの再評価が始まった時期です。

N.W.A.やN.W.A.のメンバーだったドクター・ドレーは特にP-Funkが多かったですね。大和田俊之は当時「これなら、おとなしくP-Funkを聴いていますという感じだった」と語っています。私は単純に面白がって聴いていました。ドクター・ドレーの『Let Me Ride』とパーラメントの『Mothership Connection』はやっぱり、まったく別物ですよねぇ。しかし、この前、ブーツィー・コリンズのライブで聞いた『Mothership Connection』はラップのない『Let Me Ride』に聞こえました。ちなみブーツィーはスヌープ・ドッグのおじさんみたいです。

ロックとヒップホップを比較しているところもけっこう面白かっですね。ロックは資本主義からドロップアウトする音楽で、死因は自殺が多いのに対して、ヒップホップは資本主義に入っていく手段で、死因は他殺が多いというのには笑いながら納得させられました。

ヒップホップをやっている人はヒップホップに対するこだわりもあまりなく、ラッパーは売れるとなぜか俳優に転向する人が多いことも触れられています。ウィル・スミスはアメリカ以外の国ではラッパーだったことを知っているは少ないのでは思ってしまいます。

アイス-Tも現在では俳優業の方が本業でテレビドラマの刑事役が人気となっていると書かれていました。この人は昔、警官殺しをネタにした歌詞の『BODY COUNT』(ヒップホップではなくヘビメタでした)という曲を歌っていました。

アイス-Tが来日した時はヒップホップではなくヘビメタバンドのBODY COUNTとしてやって来て、ラップはまったくやりませんでした。渋谷のON AIRに見に行きました。

「ヒップホップやラップは音楽じゃない」と言ってヒップホップを否定する人が今でもけっこういますが、この本ではヒップホップはゲームであり、少年ジャンプであり、プロレスであり、お笑いであると言っています。なるほど、そういう事かヒザを打ってしまいました。

文化系のためのヒップホップ入門 (いりぐちアルテス002)
文化系のためのヒップホップ入門 (いりぐちアルテス002)