ぶら~りネット探訪

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『競馬の血統学―サラブレッドの進化と限界』を読んだ

以前、TBSラジオ『Dig』で藤木TDCが吉沢譲治の『血のジレンマ―サンデーサイレンスの憂鬱』を紹介していて、その話がけっこう面白かったので吉沢譲治という人に興味が湧き、図書館にたまたま『競馬の血統学―サラブレッドの進化と限界』があったので読んでみました。

この本は1999年にJRAの馬事文化賞を受賞しているそうです。私が読んだのは2001年にNHKライブラリー版として出版された方で、表紙がサンデーサイレンスのアップです。

この本は9つの章から構成されていて、サイトサイモンからロイヤルチャージャーまで8頭の歴史的な種牡馬について、ほぼ時系列に19世紀から20世紀のイギリスを中心とした競馬の流れが書かれています。

私は90年代から実際の競馬や別冊宝島の『競馬読本シリーズ』やゲームの『ダービースタリオン』などで競馬の血統についての知識を得てきましたが、体系的に書かれた血統についての本を読んだのは今回が初めてでした。

JRAの馬事文化賞を受賞しているので、格調高く学術的な本のような感じに見えますが、現代の日本の競馬について語っている部分も多く、文章も堅苦しくなく、非常に読みやすい本になっています。セントサイモンの章では冒頭でビワハヤヒデナリタブライアンの兄弟とマヤノトップガンの名前が出てきます。

この本を読んで一番驚いたのはセントサイモンの血は現代のサラブレッドにしっかり受け継がれていることです。ちょっとサラブレッドの血統について知っている人なら「セントサイモンの悲劇」とい言葉を聞いたことがあると思います。私はてっきりセントサイモンの血統は途絶えたと思っていたのですが、セントサイモンはしっかり現代に受け継がれていました。まぁ、この本に出てくる歴史的な種牡馬の血統表を見てみれば分かることなのですが。

ノーザンダンサーネアルコハイペリオンを通じてセントサイモンの血が入っているし、トウルビヨンも母系にセントサイモンが入っています。ロイヤルチャージャーも父がネアルコなのでセントサイモンの血が入っています。ネイティブダンサーも一見セントサイモンが入っていないように見ますが、ファラリスを通じてセントサイモンの血が入っています。

第一章で父が同じサラブレッドを兄弟とすると「馬類みな兄弟」になってしまうと書かれていますが、セントサイモンの血の広がりには驚きました。ちなみに「世界は一家、人類みな兄弟」と言って競艇を始めた笹川良一さんです。

この本ではある血統が飽和状態になったとき、次代を担う馬は競馬の中心(イギリス)から離れた地域から登場したと書かれています。イタリアのネアルコ、フランスのトウルビヨン、カナダのノーザンダンサー

終章ではサンデーサイレンスによってもたらされた日本の競馬の進化について書かれています。この部分はNHKライブラリー版で追加された部分でエルコンドルパサー凱旋門賞2着やステイゴールドドバイシーマクラシック制覇についても触れられています。ここで面白いのはステイゴールドがヨーロッパで種牡馬になり成功するようなことがあれば日本の在来血統にも世界の注目が集まるのではないかと書かれているところです。ステイゴールドはヨーロッパで種牡馬になることはありませんでしたが。去年の凱旋門賞の2着のナカヤマフェスタステイゴールド産駒でした。残念ながらナカヤマフェスタの母系は日本の在来血統とは言えませんが。

今年のダービー馬オルフェーヴルの母の父はメジロマックイーンノーザンテーストの4×3でもあります。あの不良場のダービーを勝ったオルフェーヴルならヨーロッパの重たい馬場でもいい勝負になるような気がするのですが。

競馬の血統学―サラブレッドの進化と限界 (NHKライブラリー)