ぶら~りネット探訪

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『さや侍』を見た

松本人志監督、野見隆明主演の『さや侍』見ました。

松本人志監督作の前の2本の映画は見ていません。松本人志ダウンタウンのテレビ番組もほとんど見ていません。ダウンタウンが出ている番組で定期的に見ていたのは『夢で逢えたら』くらいです。野沢直子清水ミチコが面白くて見ていたのですが。

この映画に興味を持ったのはネットで予告の動画を見たのがきっかけです。『さや侍』というタイトルの奇妙さ、主演の野見隆明がどういう人間なのか不可解なところに惹かれました。

公開されてからの評判はいま一つな感じ、『もしドラ』と『さや侍』どちらを見るか悩みました。そんな時にアサヒ芸能か週刊実話の電車の中吊り広告で「これは映画ではない」と書かれていたのを見て『さや侍』を見ることにしました。

正直、ほとんど期待していませんでした。『SPACE BATTLESHIP ヤマト』、『あしたのジョー』や『豆腐』を見るときのようにどこまで酷いものが出てくるかというところには期待していました。しかし、実際に見てみたら、意外にも普通な映画で驚きました。不覚にも笑えて、グッときたり、胸が熱くなったりしました。

主演の野見隆明は役者ではなく、映画ということも伏せられて撮影されたそうで「三十日の業」はほとんどドキュメンタリーなのだそうです。「三十日の業」がこの映画の肝になっています。最初は痛々しく滑りっぱなしの野見の芸が、娘のたえや門番たちの協力を得て、徐々にスケールアップし面白くなっていくところの演出がよく出来ています。

30日で若君を笑わせられないと切腹という設定はお笑い芸人である松本人志自身のセルフパロディのような入れ子構造になっているような気もします。

妻の急死をきっかけに刀を捨て、侍であることも捨てようとした男が死にたくない一心から、必死に一日一芸に打ち込んでいくうちに、誇りや娘の信頼も取り戻すという非常にストレートで真っ当な映画です。宇多丸さんが言うところの「負け犬たちのワンス・アゲイン」的な映画と言えるかもしれません。

娘のたえを演じる熊田聖亜という子役の演技は一本調子で、そんなに演技は上手いとは言えないのですが、逆にそこが良かったです。「父は、侍です。父への無礼は許しません。」という台詞がいいですね。最後の日に城に向かう途中で野見と手を繋いで笑顔になるところも良かったです。

門番の平吉を演じた柄本時生のバカぽい表情や振る舞いも良かったですね。逆に板尾創路の演技はちょっと取って付けたような感じでした。『愛のむきだし』や『空気人形』での板尾さんはもう少し上手かった気がします。

とは言え、細かい部分では粗と言うかツッコミ所もいくつかあります。ラスト近くの父からの手紙を坊さんが読んでいると途中で歌になるところはかなり違和感がありました。狂言回し的な三人の賞金稼ぎ(りょう、ROLLY腹筋善之介)の台詞が説明的すぎるのも気になりました。さえが城に潜り込んで若君に会いに行くシーンもいらなかったですね。時代考証的なものをこの映画にもとめるのは野暮ですね。この映画はファンタジーというか寓話的な話ですから。

野見に台詞を喋らせてしまったのもちょっとどうか思いました。最後まで無言で通すか、最後に一言だけ喋った方が良かったと思います。ラストの「首が~戻った!」は笑えて、泣けたんですけどね。

とりあえず感動させればいいという風潮が日本映画にはあり、なにがなんでも感動に繋げようとしている日本映画が多いですね。みうらじゅんは「涙のカツアゲ」といっていました。この映画はそういった不自然な展開はほとんどないところがいいですね。

父から娘へ~さや侍の手紙~