ぶら~りネット探訪

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『ザ・コーヴ』を見た

何かと話題の『ザ・コーヴ』を見ました。

映画評論家の町山智浩さんの話やTBSラジオ『Dig』などで特集されていたのを聞いて、かなり期待してきました。

スパイ映画のような隠し撮り、主演のリック・オバリー(『わんぱくフリッパー』の調教師だった人)の電波的な狂い方やトンデモ映画、プロパガンダ映画としての出来にかなり期待していたのですが、正直あまり面白い映画には感じられませんでした。

イルカ漁の隠し撮りをメインに、間にIWC(国際捕鯨委員会)での日本がどの様に立ち回っているかというエピソードとイルカの肉には大量に水銀が含まれているので食べるのは危険というエピソードやリック・オバリーがなぜイルカを救う活動をするようになったかというエピソードが途中途中に挟まったかたちで映画は進んでいきます。

オープニングで流れる暗視カメラで太地町の様子を撮ったネガポジが反転したような映像は緊張感が高まり、サスペンス映画やスパイ映画が始まるようなワクワク感は高まったのですが、隠し撮りに使う石のハリボテがどうにも安ぽいかったり、隠し撮りの装置を仕掛けるシーンにほとんど緊張感が感じられないのにはかなりがっかりしました。

イルカの肉に大量に水銀が含まれていて危険という話で強引に水俣病に結びつけるとこのトンデモぶりは笑えました。しかし、この辺はかなりこの映画で恣意的で危険な部分になっています。水俣病に対する知識のない人が見たら、イルカや鯨の肉を食べると病気になると勘違いする危険があります。水俣病公害病ですよ。太地町の住民の体内から他よりも高い濃度の水銀が検出されたというニュースは最近やっていました。でも表立ったな健康被害は今のところ見られないそうです。

途中でやたらに早回しの映像と暗視カメラの映像が出てくるところも気になりました。何か話に詰まったら早回しと暗視カメラの映像を出しとけばいいやみたいな感じでした。築地市場でマグロが並べられて解体されていく様子を早回しで見せるシーンがあります。このシーンを見たあと最後に太地町で漁師たちがイルカの死体を処理するシーンを見ると、あまり残酷に見えませんでした。私がイルカに特別な思い入れがないせいかもしれません。

主演のリック・オバリーがそんなに狂った人ではなかったのも残念でした。計算しているというかビジネスとしてイルカを救う活動をしているところが感じられます。『ゆきゆきて、神軍』の奥崎謙三のような感じの暴走を期待したりしていたのですが、そういった狂気は全く感じられませんでした。

捕鯨活動家の人は鯨やイルカは知能が発達しているので、牛や豚のような扱いをしてはダメだとよく言います。この映画でもそういったシーンが数多く出てきます。私には「賢い奴は大事にして、バカは死んでもかまわない」と言っているように聞こえます。「有色人種は劣っているので奴隷にしてもかまわない」とか「ユダヤ人は劣っているから絶滅させるべき」という白人至上主義やナチスとさほど差がないようにも感じます。

この映画の始まる前にミャンマーについてのドキュメンタリーとイランで抑圧されながらも音楽をやっている若者たちを撮ったドキュメンタリーの予告をやっていました。イルカを救う前に救うべきものは色々とある気がしました。

エンドロールの時にかかるのはフリッパーズ・ギターの曲では当然もありません。デヴィッド・ボウイの『HEROES』がかかります。確かロバート・フリップがギターを弾いていたと思います。恐らく歌詞の中にイルカが出てくるので使われているのだと思いますが、この曲はベルリンの壁の悲劇を歌った曲です。