ぶら~りネット探訪

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『ハート・ロッカー』を見た

アカデミー賞で作品賞、監督賞を含む6部門を獲得した、キャスリン・ビグロー監督作品『ハート・ロッカー』を見た。イラクでのアメリカ軍の爆弾処理班の活躍を描いて映画です。

タマフルポッドキャストでこの映画を巡って宇多丸さんと町山智浩さんが熱い論争を繰り広げていたので、正直あまり興味がなかったのですが見てみました。映画のあらすじどころか、最後にどうなるかまでほぼ分かった状態で見たわけですが、楽しめました。いや、楽しめる内容の映画ではないですね。

宇多丸さんはジャンルムービー(アクション映画)としては非常に優れているとおっしゃっていましたが、私にはけっこう重い映画に感じました。前半の砂漠での狙撃戦は確かにハラハラドキドキのアクションというか、戦争娯楽映画という感じで見れるのですが、それ以外のシーンは緊張感と言うか緊迫感が凄いですね。

特に中盤以降は主人公たちの爆弾処理班の失敗が続き、鎮痛で重たいシーン続きます。さんざん言われたことだと思いますが、この映画の主人公の姿はイラクに攻め込んだアメリカそのものです。大量破壊兵器を持っているとしてアメリカはイラクに攻めこんで、簡単に首都バグダッドも陥落させフセインも捕まえて処刑しましたが、その後のイラクの統治、民主化に失敗し現在に未だに泥沼から抜け出せないでいる。

何度も失敗を繰り返す主人公はアメリカの妻に電話をかけるのですが、主人公は妻に話しかけることが出来ず無言で電話を切ってしまうシーンが印象的で私はグッと来ました。主人公が精神的に追いつめられて、思わず家族に電話してしまうところはスピルバーグの『ミュンヘン』を思い出しました。全体的にも『ミュンヘン』の重たさは『ハート・ロッカー』に似ている気がしました。

雑誌などで著名人がこの映画に語っているのをいくつか読んでみたのですが、町山さんと宇多丸のようにけっこう意見が分かれているようです。小林信彦はラストの主人公が再びイラクで爆弾処理に向かうシーンを感動的な名場面と言う感じで捉えていました。落合信彦は地獄のような戦場に再び戻る主人公は戦争中毒だからだと言う捉え方をしていました。鴻上尚史は相変わらずアメリカは他国で勝手なことをしていると感じでかなり否定的で『アバター』の方がマシ、みたいな事を書いていたような気がします。

町山さんと宇多丸さんの対談を最初に聞いた感じでは根本敬が言うところの「でもやるんだよ」的な感じかと思っていたのですが、実際映画を見たら、主人公が失敗を重ねるシーンはかなりリアルで重く、悲惨で、自分だったら再びイラクに戻るという選択は取れないと思いました。

エンドロールでミニストリーの曲がかかります。私はミニストリーは好きなバンドでした。以前は。私が聞いたのは『Filth Pig』までです。最近のミニストリーは反ブッシュの姿勢を明確にした歌詞の曲が多いそうでエンドロールで流れる『カイバー・パス』もそんな歌詞なのですが歌が始まる前にフェイドアウトされます。『カイバー・パス』は何も知らなかったらミニストリーの曲とは気がつかなかったと思います。ミニストリーの曲では『Thieves』が好きでした。