押井守が古今東西の映画監督について語ったインタビュー集。私はそんなに映画を見る方じゃないけどかなり楽しめました。表紙の監督コントみたいに叫んでいる押井守のイラストが最高です。
押井守によると映画監督の勝利条件とは結局、映画を撮り続けることだそうだ。押井守は取り続けているので自分自身は勝ち続けているとおっしゃっています。ちなみに押井守の監督作品で観客動員が100万人を超えた映画はないそうです。それでもトータルで(ビデオやDVDを含めて)赤字にならず、映画を取り続けている押井守はたいしたものなのでしょう。
第1回では宮崎駿をメインに語っていて、ここではいきなり「勝てばいいってもんじゃない」とか「勝ちすぎてもいけない」と言ってます。また、この回では富野由悠季、出崎統、庵野秀明といったアニメ監督についても語っていて、庵野秀明は富野由悠季の悲劇を継ぐのでは?という話をしていたり、大きく勝ちすぎてしまって、その後が大変だった人の例としてはヤマトの西崎義展の名前が出きたりもします。
押井守はジェームズ・キャメロンやウォシャウスキー兄弟に会ったことがあるそうで、その辺の話もかなり面白いものになっています。
ウォシャウスキー兄弟と合ったときには兄のラリーだけしか喋らなかったそうです。弟のアンディは喋らないどころか目もあわせてくれなかったそうです。映画作りでは交渉事や現場を仕切るのは兄のラリーの方で、弟のアンディは対人関係が苦手ではクリエイティブなアイディアを出したり、絵コンテを切ったりしているらしいそうです。容姿も対称的(兄は痩せていて、弟はデブ)で、そんなウォシャウスキー兄弟を見て押井守はゲイの夫婦かと思ったというのには笑いました。ラリーの方は何年前に性転換したという噂もありましたね。
ウォシャウスキー兄弟は押井守に『アニマトリックス』を撮らないかと言われたそうで。その際に『マトリックス』の絵コンテや設定資料を見せてくれて、その資料の日付は『攻殻機動隊』の公開よりも前になっていてそうです。ウォシャウスキー兄弟は『マトリックス』の元ネタが『攻殻機動隊」と言われていたことをかなり気にしていたようです。
日本より海外での評価が高かい点や、興行的なヒットが殆どないたけしについて押井守は評価しているし、シンパシーも感じているようです。ちなみにたけしは東スポ映画際で作品賞に『攻殻機動隊』を選んでいたりしました。
樋口真嗣の唱える「イス理論」の話もけっこう面白かったですね。日本の映画界の監督のイスには数に限りがあって、座れる人間も限られているそうで、空きができると誰かがその代わりに座るという理論。黒澤明のイスには今、宮崎駿が座っていて、実相寺昭雄のイスには押井守。樋口真嗣が座っているのは舛田利雄のイスだそうだ。舛田利雄という監督は『ノストラダムスの大予言』、『人間革命』、『二百三高地』、『大日本帝国』といった映画を撮っている人で『宇宙戦艦ヤマト 復活篇』の総監修もしているそうだ。押井守は樋口真嗣の「イス理論」には否定しています。『日本沈没』や『隠し砦の三悪人』などのリメイクを撮っている樋口真嗣には『ノストラダムスの大予言』や『人間革命』、のリメイクをやってもらいたいですな。
その他にも深作欣二、タルコフスキー、ヒッチコック、ゴダール、デビッド・リンチなど押井守の独断で色々な監督について語っています。正直、押井守はもう映画を撮らなくていいから、映画評論家になっても面白いのではと思いました。
勝つために戦え!〈監督篇〉