ぶら~りネット探訪

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押井守の『他力本願―仕事で負けない7つの力』を読んだ

タマフル 春の推薦図書」は『勝つために戦え! 〈監督篇〉』 を紹介してましたが、私はつい最近、『他力本願―仕事で負けない7つの力』を読みました。

タイトルからすると勝間和代などが書くビジネス書みたいな感じがしますが、押井守が書いた本なので当然ビジネス書ではありません。あくまでも押井守の映画の作りかがどういうものか語った本です。

この本は2008年の『スカイ・クロラ』の公開にあわせて出版された本なので『スカイ・クロラ』での仕事の話が中心になっています。『スカイ・クロラ』については公開当時に見ましたが、期待はずれな作品でした。でも、この本は面白いものになっています。

押井守は初めからアニメを撮りたかったわけではなかそうで、アニメの記号化された表現集方や声優の起用法について最初は戸惑いを感じたそうだ。しかし、話題性などから有名な俳優やタレントを安易に自分の作品に使うことは余り快く思っていないようだ。

この本には書かれていませんが、『イノセンス』ではプロデューサーの鈴木敏夫草薙素子役に山口智子を起用したいという提案を断ったという話を聞いたことがあります。

押井守は男の子の声を大人の女性の声優が演じることを最初は奇異に感じていたそうです。しかし、子役の演技力のある声優は存在しないことから納得したそうだ。『千と千尋の神隠し』や『ハウルの動く城』の神木隆之介くんや『崖の上のポニョ』の土井洋輝くんは例外中の例外ということでしょうか。

ジェームズ・キャメロンとの交流の話もでてきたりします。ジェームズ・キャメロンの大まかな映画作りの流れは、「キャラクター→ストーリー→世界観の構築」で、押井守は全く逆の順序で仕事を進めるそうです。

私が一番面白く感じたのは「エピローグ」です。押井守が幼いころから、現在までの自分の人生を振り返る内容になっています。

1951年東京の大森に生まれて、物心ついた頃にはまだ町には戦争の傷痕が残っていたそうだ。父親の職業は探偵だったそうですが、実質的に家計を支えていたのは母親だったそうだ。

反戦高校生として学生運動をしていたころの話が特に印象的でした。特に政治に強い関心があったわけではなく、他に居場所がなかったので学生運動をやっていたそうだ。アニメ版の『うる星やつら』のメガネは高校時代の押井守自身を投影しているような気がしました。メガネの演説に「異議なし!」とパーマ、チビ、角刈りが応えるシーンは学生運動のパロディなんですよね。

タツノコプロを振り出しにアニメの仕事を始めてから話は断片的にですが知っていましたがそれ以前の話は初めて知ることが多かったですね。もっと詳しい自伝みたいなモノを書いて欲しい、そして映像化もしてもらいたいですね。

この本を読み終わって、ふと気が付いたのですが、実写版の映画作りにはほとんど語られていませんね。

他力本願―仕事で負けない7つの力
他力本願―仕事で負けない7つの力