ぶら~りネット探訪

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愛甲猛の『球界の野良犬』を読んだ

プロ野球選手である愛甲猛が自らの半生を語った本です。吉田豪が『小島慶子☆キラキラ』などで紹介していて、面白そうだったので読んでみました。

幼いころの複雑な家庭環境から話は始まります。両親は再婚同士で、父親は愛甲が5歳のときに事業に失敗し、借金を残して女と失踪してしまいったそうで、かなり貧しい少年時代を過ごしたそうです。

小学校のころかに野球を始め、体が成長し始めた中学時代は身体能力の高さからバレーボールやバスケット、水泳などでからも誘いがあったそうです。そんな中学時代から不良の道にも精を出し始め、タバコ、女、シンナー、万引きなどはこのころ覚えたそうです。成長期にタバコやシンナーをやりながらスポーツでも高い能力を発揮する人間ってなんなんでしょうか。

横浜高校へは授業料免除の特待生で、寮生活の野球漬けのはずが、タバコ、女、シンナーは高校2年までやっていたそうで、3年の時に本気で甲子園での優勝を目指してタバコ以外は断ったということです。しかも、1年の2月から渡辺監督の自宅に下宿していたにもかかわらず。

甲子園で優勝した後は周りの扱いが変わって、授業中に別室に呼び出されて色紙にサインを書かされたというのもエピソードが凄いですね。お茶やお菓子を出されて、なんならタバコも吸うかと言われたそうです。

甲子園で優勝した時に失踪していた父親が週刊誌のインタビューに愛甲に全く断りもなく答えていたというエピソードはなんだか笑えました。その後、父親との交流はなかったそうです。

高校時代の思い出で興味深いのは、野球部の合宿で漫画の「あぶさん」をトイレに持ち込んでオナニーしていたと思われる野球部員がいたという話です。TDNみたいな人なんでしょうか?

ドラフト前にはプリンスホテルや西武の関係者と接触を持っていと語っています。大洋を希望していて、大洋でなければプリンスホテルと考えていたようです。ロッテに1位指名されたときの嫌な表情を浮かべていたのは私も覚えています。ロッテ関係者が挨拶に来た日には女との先約があったのですっぽかしたそうです。

プロ野球時代の話はやはり野球が中心で落合博満との師弟関係などけっこう真面目な話が続きますが、チームメイトで大先輩の張本勲村田兆治、監督だったカネヤンこと金田正一のエピソードなどは笑えます。

ロッテ時代のシーズン終盤でチームの順位や個人成績が絡んだ微妙な駆け引きというか取引について書かれている部分は、大相撲の終盤戦の星勘定に似たものを感じました。

暴力団関係者との付き合いや野球賭博、ブロ野球選手の間での賭けゴルフに関することもかなり具体的に書かれています。さすがに高校時代のタバコやシンナーに比べるとこの辺の話題は、洒落にならないのですが、ほとんど高校時代の悪さと同じトーンで語られています。

中日に移籍してから始めたドーピングについてもかなり詳細に語られています。ドーピングは後遺症などマイナス面も非常に大きかったわけですがリーグ優勝の喜びと現役最後の輝きと引き換えにしたと考えているようです。

ドーピングまでして野球に固執する姿や引退後の会社勤めや自分で会社をやったりしたが、馴染めず、トラブルを起こして堅気の仕事をやめて、野球の指導者の道を歩み始めた現在の姿はなんだかミッキー・ロークの映画『レスラー』を思い出しました。

昔の悪事をほとんど反省もなくさらりと書いている部分に違和感を覚える人やスポーツや野球に純粋な感動などを求める人などには不愉快な本かもしれませんが、私には妙な清々しさを感じさてくれる本でした。

球界の野良犬
球界の野良犬