大槻ケンヂの映画に関するエッセイ集、『オーケンの、私はヘンな映画を観た!!』を読んでみました。タイトルやネタになっている映画、そして装丁から洋泉社(「映画秘宝」を出しているところ)から出ている本かと思ったのですが、キネマ旬報で連載していたものをまとめたものでした。イラストは三留まゆみが描いています。
扱っている映画は有名な作品もありますが、タイトルに「ヘンな映画」とあるように語られる映画の中心はカルトでマイナーなものばかりです。オーケンが最初に見た映画は『キングコング対ゴジラ』。この本で最初に詳しく語られているのは『ノストラダムスの大予言』です。しかもオーケンが見たのは公開後にクレームが付いて、問題になったシーンをカットした短縮版ではなく完全版だそうです。この映画がトラウマになりしばらくは映画館に入ることもできなかったそうです。
オーケンのヘンな映画を笑いに持っていく芸風というか技術はみうらじゅんに通じるものがあるように感じます。ビートたけしの『BROTHRE』については『元気が出るテレビ』と絡めて語ったり、ビートキヨシに「よしなさい」とツッコミを入れさせたいと語ったりしているのが笑えます。
本人が本人の役を演じる映画を紹介しているところもいいですね。『赤い暴行』という映画で内田裕也が内田裕也役を演じていて、なぜか映画の中の内田裕也はアイドルのようにギャルに囲まれたりしているそうな。モハメド・アリが自分自身を演じる『アリ ザ グレーティスト』で電話をかけるアリの小指が立っているという細かいツッコミも笑えます。
オーケンはなぜか内田裕也が出演している映画をよく見ているようで、『嗚呼!おんなたち 猥歌』(ロマンポルノ)という映画についても語っています。この映画で内田裕也は売れないロッカ歌手という役どころで、マネージャーは安岡力也。キャバレーの営業で客に演歌を歌えと野次られて、北島三郎の『与作』をうたうシーンがあるそうだ。
最後の方ではオーケンが書いた小説を映画化した話、オーケン自身が映画に出演した話が語られています。
オーケンの小説『STACY』を映画化したものをビデオで見たオーケンは原作者なのにストーリーが全く分からなかったそうだ。
オーケンが出演した映画『!(ai-ou)』はなんと今をときめく堤幸彦(当時は堤ユキヒコ)監督の作品。この映画でオーケンは一言もセリフがなかったそうだ。堤ユキヒコ監督はとにかくダンドリ優先でテキパキと撮影をこなしていくスタイルの監督で、役者は本当に芝居を見ているのかと不安になる人もいて、監督に謀反を起こす役者もいたそうだ。
韓国映画『怪獣大決戦ヤンガリー』の主題歌を当時のオーケンのバンド「特撮」が担当したときの歌詞の話も笑えます。『ゴジラ対へドラ』の挿入歌『かえせ太陽を』の一節を引用してたというのもいいですね。
オーケンの、私はヘンな映画を観た!!