ぶら~りネット探訪

音楽、競馬、映画などについて非常にテキトーにダラダラと綴っていくブログでございますですよ。

『グラン・トリノ』を見た

監督、主演クリント・イーストウッドの『グラン・トリノ』を見ました。この作品でクリント・イーストウッドは俳優業を引退し、監督に専念すると言われています。

奥さんに先立たれた、息子や孫と打ち解けられないコワルスキー爺さんは古き良きアメリカを愛するガンコ爺さん。星条旗をいつも玄関に掲げ、自慢のグラン・トリノをいつもピカピカに磨き、愛犬のディジーとビールを飲みながら眺めている。そんなコワルスキー爺さんのとなりにアジア人のモン族の一家が引っ越してきます。

コワルスキー爺さんは朝鮮戦争に従軍していて、差別主義者で口を開けば差別用語だらけの困った爺さん。でも朝鮮戦争での経験が心の中に引っ掛かっている。一度はモン族のギャングにそそのかされてグラン・トリノを盗もうとした隣のタオを、ひょんなきっかけからコワルスキー爺さんはタオを一人前の男に育てることになって・・・。

前半のコワルスキー爺さんとタオとタオの姉のスーの絡みが絶妙で、紆余曲折しながら互いに打ち解けていく様子が笑いを交えながら展開していきます。私はイタリア系の床屋の親父のところでタオに「男同士の会話」を教えるところが好きですね。

後半はモン族のギャングとの絡みで、ガラッとシリアスで悲劇的な展開になります。モン族のギャグに殴り込みをかけるコワルスキー爺さんの落とし前の付け方が私にとってはかなり意外でした。「暴力の連鎖はこうして断ち切れ」というクリント・イーストウッドのメッセージと言うか提案のような感じでした。

この映画は、ある意味アメリカの現在、そして将来どうなっていくのかを具体的に見せてくれている映画でもあります。アメリカの自動車産業の衰退はコワルスキー爺さんの息子がトヨタのディラーであることや、コワルスキー爺さんの住むデトロイトがスラムしていることで見せてくれています。ちなみモン族のギャングが乗っていたのはホンダの車でした。ウージーというサブマシンを持っていたのには驚きました。ウージーイスラエル製です。

デトロイトはほとんどスラム化で白人はみなん出て行ってしまったというのは、コワルスキー爺さんが病院に行くと、コワルスキー爺さん以外は全部、有色人種ということでわかります。コワルスキー爺さんの息子たちもデトロイトから離れて暮らしています。

今年アメリカは黒人のオバマ大統領が誕生し、最近は最高裁判事に 初めてヒスパニック系のソニア・ソトマイヨール氏が就任しました。町山智浩さんのコラムでは近いうちにアメリカの白人はヒスパニック系に逆転されるとコラムで書いていました。

古き良きアメリカの魂は白人ではない民族や人種にも繋げていきた、繋げていかなければならないというのがこの映画のもう一つのテーマなのでしょ。

私は特にクリント・イーストウッドのファンではなく、彼の主演作や監督作はそんなに見ていませんが、この映画でのガンコ爺ぶりは微笑ましく、頼もしく、素敵でした。爺さんの飼っている犬のディジーも良かったですね。タオの姉役のスーを演じていたアーニー・ハーも良かったですね。なんだか大後寿々花に似ているように見えました。

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