リリー・フランキー、木村多江主演、橋口亮輔、脚本、監督の『ぐるりのこと。』を見ました。去年公開の映画ですが評判が良いみたいで、映画賞をけっこう取っているみたいなので気になっていましたが、なんとなく見逃していたのですが、今回見ることができました。
リリーさんの演技がいいですね。演技しているのか地なのかがよく分からないところが素敵ですね。リリーさんの裸もけっこう見どころかもしれません。でもフィリップ・シーモア・ホフマンの裸のインパクトにはかないませんね。全体的なリリーさんの演技は『おでんくん』のおでん屋のおじさんを実写にしたような感じですね。
あらすじはリリーさんと木村多江の夫婦の物語で、生まれたばかりの子供の死、そして妻の鬱病といった困難を乗り越えていく話になっています。リリーさんは法廷画家を生業にしている役なので、法廷のシーンと木村多江の家族(寺島進、倍賞美津子)とのエピソードを織り交ぜながら夫婦の物語が進んでいくようになっています。
おそらく感動の物語だと思うのですが、最近アメコミ原作のハリウッド映画ばかり見ていたせいか、どうもこの映画には私は感動できませんでした。法廷のシーンが全体の半分近く占めるのですが、法廷の話は全くと言っていいほど夫婦や家族の話には関係がありません。ちなみ裁判のシーンは実際の事件の裁判をモデルしていて、宮崎勤の事件、オウム事件、宅間守の事件の裁判などが展開されます。どうも夫婦や家族の話だけでは時間が持たないので、水増しするために足しようにしか感じられません。裁判のシーンは実際の事件をモデルにするのではなく、なぜオリジナルで話を作って、夫婦の話に関連付けるようにしなかったのが疑問ですね。
木村多江が子供を失ったショックから鬱というか、心を病んでいく様子は割と丁寧に描かれているのに、リリーさんがちょっと抱き締めたり、お寺にお茶を習いに行ったりするだけですぐに良くなっていくのが、正直興ざめですね。
もう一つ気になったのが、音楽が後半になるまでほとんど入らなかったような気がするのですが、これは気のせいでしょうか?何か特別な意図があったのでしょうか?音楽も映画の大事な要素の1つなのでもう少し大事にしてもらいたいものです。
倍賞美津子がリリーさんの義理の母親役なのですが、これはテレビ版の『東京タワー』で倍賞美津子がオカン役だったからですかね。それにしても倍賞美津子も『東京タワー』に出ていた時から感じていたのですが急激に老けた感じですね。寺島進、柄本明など他のキャストも割と豪華なのにもちょっと驚きました。他にも八嶋智人や木村祐一、温水洋一なども出演しています。
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