ぶら~りネット探訪

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『百日紅 (上)』を読んだ

杉浦日向子の漫画『百日紅 (上)』を読んで見ました。この漫画は原恵一監督、Production I.Gの制作で『百日紅 〜Miss HOKUSAI〜』としてアニメで映画化されています。

杉浦日向子と言うとNHKの『コメディーお江戸でござる』に出演していたのと荒俣宏と結婚していたことくらいしか知りませんでした。今回、『百日紅』が映画化されたので原作の漫画はどんなものかと思い読んでみました。1983年から1987年にかけて『漫画サンデー』に連載されていたそうです。杉浦日向子が亡くなってす今年で10年経つようです。

百日紅』は一話完結の短編集で葛飾北斎こと鉄蔵とその娘、お栄、弟子の善次郎が話の中心ですが、この三人は狂言回し的なキャラクターでもあり、ゲストキャラクターが主人公になる話も多くあります。

時代が江戸時代で舞台も貧乏長屋だったりするので落語みたいな話もけっこうあります。アニメと決定的な違いは艶っぽい話が多いことですね。善次郎はアニメのデザイよりもいい男で印象が全然違いました。

『春浅し』というエピソードには鉄蔵の二男の多吉郎が登場します。多吉郎は御家人の家に養子に入り、元服したということで鉄蔵に挨拶にやって来ます。多吉郎は鉄蔵には似ず堅物のため、鉄蔵と善次郎で元服祝いに茶屋の女をあてがってやろうとする展開になります。これは落語の『明烏』と同じ様な話ですが、さすがにオチがは『明烏』とはちょっと違いました。

鉄蔵と女弟子がスッポン鍋を食う『女弟子』という話は女弟子のエロさと人間がスッポンになるグロいシーンが非常に印象的でした。魚屋がスッポンをさばくシーンは伊丹十三の『タンポポ』を思い出しました。ちなみ『タンポポ』の公開は1985年でした。

『人斬り』ではウナギをさばくシーンがあります。侍だった善次郎の忘れたい過去、トラウマについての話なのですが人斬りよりもウナギをさばくシーンが印象的でした。

『四万六千日』は歌川国直と幼なじみの「源ちゃん」が浅草寺ほおずき市で偶然再会する話で、勘当になった若旦那が船頭になる話ではありませんでした。この話の国直は落語に出てくる左甚五郎的なキャラクターでした。

一つ一つの話はけっこう短く一読するとあっさりした印象ですが、何度か読みなおしてみると色々と細かい発見や視点を変えると見えてくるものが違ったりする漫画でした。鉄蔵が善次郎が地べたに寝そべったり、屋根の上に上がったりすることで見えるものが変わってくることを実際にやってみて教えるシーンもありました。

百日紅 (上) (杉浦日向子全集 (第3巻))