キャスリン・ビグロー監督、ジェシカ・チャステイン主演の『ゼロ・ダーク・サーティ』を見ました。
ジェシカ・チャステインが演じるCIAの分析官は日夜、911テロの首謀者ウサーマ・ビン・ラーディンを追っている。CIAは手段を選ばずアルカイーダビンラディンを追うが、手がかりすら見つからない状態で、逆に自爆テロで犠牲者を出してしまい、追いこまれていく。マヤたちは僅かな情報からビン・ラディンへの手がかりを掴むのだが、というお話。
2011年5月にアメリカはビン・ラディンを殺害したことを発表したので、この映画の結末は見る前から分かっています。結末が分かっていてもハラハラ・ドキドキさせられる映画でした。その点はアメリカと中東、主役がCAIという類似点が多い『アルゴ』似ています。しかし、『ゼロ・ダーク・サーティ』にはミッションを達成してもカタルシスや爽快感は全くない点が『アルゴ』と大きく違います。
クライマックスのビン・ラディンが潜伏している屋敷への特殊部隊の突入シーンは圧巻なのですが、なんだか忠臣蔵の討ち入りを思い出してしまいました。アメリカにとって911テロは忠臣蔵、ビン・ラディンは吉良上野介なのか?マヤは大石内蔵助なのか?屋敷に突入してもビン・ラディンがなかなか見つからないという点も忠臣蔵みたいでした。ビン・ラディンは炭小屋には隠れていませんでしだが。まぁ、ニューヨークの仇をパキスタンで討つというということに間違いはありません。全然関係ありませんが、マヤはやっぱり恐ろしい子でした。
諜報機関が仇を討つ史実を元にした映画としてはスピルバーグの『ミュンヘン』にも近いものがあります。エリート集団と思われている諜報機関が失敗を繰り返すところややたらに爆発音がでかい所も似ていました。そして、ミッションを達成しても主人公が報われないというエンディングも似ています。
この映画を見る限りではCAIはイラクに大量破壊兵器があったと信じていたように描かれているようでした。ビン・ラディンの殺害に関しても衛星写真などで完全に裏がとれた状態での決行ではなく、マヤの迫力にCAIの幹部押し切られてように見えました。とりあえず突入してみたら、ビン・ラディンがいたので結果オーライでラッキーでした、というふうに私には見えました。
アフガンの米軍基地に情報提供者を装った自爆テロの車が入ってくる前に基地の中に野良猫らしき姿が一瞬映るんですが、あれはクロネコで不吉の前兆ということなんでしょうか?
作戦の実行を特殊部隊へ知らせにマヤが向かった先がエリア51というのには驚きました。UFOや宇宙人が出てくるのかと思ったらステルス仕様のヘリコプターが出て来ました。ステルス仕様ということでB2爆撃機みたいな角ばったデザインのヘリコプターは斬新でした。
ビン・ラディン邸に突入する準備でヘリコプターに軍用犬も乗り込んでいるシーンがありましたが、ミッションが終わってアフガンの基地に戻ってきたときには犬の姿がなかったように見えました。あの犬たちはどうしちゃったんでしょうか?
エンディングは仇討ちはできたけど、暴力の連鎖、恐怖の応酬は続くよ、どこまでもという感じで非常に重たい感じでした。この辺が『アルゴ』との大きな違いですね。『アルゴ』がアカデミー賞の作品賞をとれたのはハッピーエンドで、映画賛歌だったからだと思います。