ぶら~りネット探訪

音楽、競馬、映画などについて非常にテキトーにダラダラと綴っていくブログでございますですよ。

『の・ようなもの』を見た

去年の年末に亡くなった森田芳光監督の追悼特集上映を銀座シネパトスでやっているので、『の・ようなもの』と『本(マルホン)噂のストリッパー』を見てきました。

『の・ようなもの』は1981年に公開された森田芳光監督のデビュー作。主演は伊藤克信秋吉久美子で、若い落語家たちの青春群像劇といった映画です。

森田芳光自身も大学時代、落研に所属していて、先輩には高田文夫がいたそうだ。ウィキペディアで読むと、この映画の志ん魚(伊藤克信)と志ん米(尾藤イサオ)の関係は森田芳光高田文夫の関係をモチーフにしているようです。尾藤イサオの非常に軽い感じは言われてみれば高田文夫みたいでした。そば屋での志ん水と志ん米のやり取りはバカバカしくて良かったです。

冷たい熱帯魚』の怪演で今年の日本映画の助演男優賞を獲りまくったでんでんも志ん魚の兄弟子の志ん水として出ていました。志ん水は詐欺師で粗暴なところもない気の良い兄でした。

関根勤小堺一機はおすぎとピーコのようなオカマのコンビとして登場していました。エンドロールではラビット関根でした。

志ん魚は女子高生の落研のコーチ役を引き受けたのをきっかけに、落研の女子高生と付き合うことになりのですが、その女子高生の父親役はプロ棋士芹沢博文でした。たけし軍団の芹沢名人ではなく『アイ・アイゲーム』に出ていた芹沢博文です。

この映画の見せ場は女子高生の家で落語を演じてみたものの、父親はまだしも女子高生にまでも下手だとなじられ、電車がなくなった夜中に足立区の堀切駅から浅草まで志ん魚がトボトボ歩く所だそうです。古典落語の『黄金餅』を思いだしました。

個人的には「電車がないのにどうやって帰るの?」と聞かれた志ん魚が「飛行機で帰ります」と言った所が笑えました。

下町情緒と1980年代初頭の空気感みたいなものもこの映画には強く感じられます。秋吉久美子が洗面所で歯を磨くシーンでは壁にYMOの『BGM』のジャケットが飾られていました。志ん魚の弟弟子の志ん菜は「秋葉原クラフトワークのLPを買って帰る」と言っていました。スペースインベーダーの音も使われていました。

団地でのロケ、志ん菜とその姉が横に並んでサラダを食べるシーンなどは、森田芳光監督のこの後の『家族ゲーム』に繋がっているように感じられました。森田芳光監督自身は『の・ようなもの』は『間宮兄弟』の原点と語っていたそうです。

落語がモチーフになっていますが、それほど落語をやっているシーンは多くありません。志ん魚は『寝床』と『二十四孝』を演っていました。「ありがとうの小林君」が演じていた志ん肉は『野ざらし』のサイサイ節を歌っていました。「の・ようなもの」と言うフレーズが出てくる 『居酒屋』は演じられていませんでした。

志ん米の真打昇進のパーティーのシーンで映画は終わります。このエンディングが非常に心に染みるものがありました。それぞれが次の舞台へ羽ばたいていく未来への予感と、青春が終わっていくような寂しさが微妙に混じり合っているように感じられました。

家族ゲーム』と『ときめきに死す』も良いですが、『の・ようなもの』も良いですね。遺作となった『僕達急行 A列車で行こう』の予告もやっていました。余談ですが、銀座シネパトスへ銀座線に乗っていったら、銀座線の新車両が試験運転をしているところを見ました。

の・ようなもの [DVD]
の・ようなもの [DVD]