ぶら~りネット探訪

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『人生は落語だ ~立川談志が残したもの~』を見た

NHKクローズアップ現代で先月亡くなった立川談志を特集した『人生は落語だ ~立川談志が残したもの~』をやっていました。

偶然、テレビをつけたらこの番組をやっていました。前半は立川談志が『芝浜』という落語にどう取り組んでいたかを最近の高座での姿を含めてドキュメンタリー風に描き、後半はスタジオで立川流の顧問でもあるイラストレーターの山藤章二国谷裕子が話を聞くという構成でした。

談志が亡くなってからNHKの談志関連のニュースを見ると決まって『芝浜』のサゲの映像が流れていました。

談志は生前「落語とは業の肯定だ」と繰り返し言ったり書いたりしていました。落語とは人間の弱い部分やダメな部分の肯定、非常識の肯定、世の中の道徳とは相容れないもの正反対なものと解釈しています。

『芝浜』はアルコール依存症の夫を妻が機転を効かせ、立派に更生させ、商売も成功させるという実にいい話。少し設定を変えれば教科書に載っても違和感ないような感じもします。島田紳助も好きそうな話です。

でもそんな話が「落語とは業の肯定だ」と言っていた談志の十八番と言われるともの凄く違和感があります。『談志 最後の落語論』で談志自身も円朝の人情噺を(『芝浜』、『文七元結』、『四谷怪談』)を「韓流ドラ」(韓流ドラマ)みたいなもと語っていました。深イイ話みたい人情噺は他の落語にまかしておけばいいんじゃないかと思います。

やっぱり「落語とは業の肯定」という観点からすると、『居残り佐平次』や『黄金餅』やみたいな噺を取り上げて欲しかったですね。NHKは談志が亡くなった直後の『日本の話芸』では昭和50年代に放送した談志の『居残り佐平次』を再放送していました。

居残り佐平次』は品川の遊郭で佐平次が無銭飲食した挙句に店の主人から金を騙し取るとう噺です。凄く単純に分かりやすく言えばサギ師の噺です。

黄金餅』は死ぬ前に有り金、全部をモチにくるんで食べた乞食坊主の腹から、隣に住んでいた金兵衛がなんとか金を取り出すという噺。

居残り佐平次』や『黄金餅』みたいな噺は落語の世界でなければ出会えない噺です。私はこの2つの噺や『野晒し』といった噺を聞いて落語が好きになりました。談志もこの3つの噺は得意にしていました。

クローズアップ現代の後半の山藤章二の話では、『芝浜』は多面的な談志の一部でしかないと言っていました。さらに新劇みたいに演出過剰とも言っていました。

談志が亡くなってからまだそんなに時間はたっていませんが、一部で談志を神格化するような動きがあるような気がします。談志を昭和の名人の系譜の中に組み込もうとしているようにも見えます。今回の山藤章二の話はNHKのそういった演出の意図とは逆の内容で愉快でした。