ぶら~りネット探訪

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河地依子の『P-FUNK』を読んだ

河地依子の『P-FUNK』を読んでみました。P-FUNKとはジョージ・クリントンを中心とするファンクのミュージシャン集団で彼等が演奏する音楽をP-FUNKと言います。そんなP-FUNKの歴史を綴った本でございます。

P-FUNKは70年代半ばから後半にかけてアメリカで最盛期を迎えR&Bチャートだけでなく、ナショナルチャートでもナンバーワンヒットを飛ばしたりしましたが、80年代に失速。80年代後半から90年代前半にかけてヒップホップでサンプリングのネタに多く使われたことから再評価され、来日公演なども行われました。

河地依子はR&B、ソウル、ファンクを専門とする音楽ライターで、P-FUNKの日本盤のライナーノーツも書いていたりします。私はファンカデリックの『Standing on the Verge of Getting It On』を日本盤で持っていて、ライナーノーツは河地依子が書いていました。

50年代後半のニュージャージーの床屋で理容師をしていたジョージ・クリントンジョージ・クリントンが働いていた床屋に集まった音楽仲間で結成されドゥーワップ・グループ、「パーラメンツ」からP-FUNKの歴史はスタートし、2011年のビルボード・ライブ東京での来日公演までP-FUNKの足跡が語られています。ある意味P-FUNKの一大叙事詩と言える内容になっています。表紙がジョージ・クリントンの写真であることからも分かるとおり、あくまでもジョージ・クリントンからの視点で書かれている印象があります。それでも、ジョージ・クリントンとバーニー・ウォーレルの間で金銭に関わるトラブルがこれまで何度もあったこと書かれています。

最近、爆音映画祭で『ソウル・メン』という映画を見たのですが、P-FUNKもネタになっていたり、スタートがドゥーワップ・グループだったりと色々と重なる部分があり、不思議な気分になりました。

データ集が充実しているのもこの本の魅力です。パーラメント/ファンカデリックはもちろん、ブーツィー・コリンズ、バーニー・ウォーレルのソロアルバム、さらに来日公演のメンバーリスト、メンバーの客演リスト、サンプリングリストなどが素晴らしい。ジョージ・クリントンホッピー神山のアルバムに参加していたり、ブーツィーが久保田利伸大沢誉志幸坂本龍一のアルバムに参加していたのも書かれています。バーニー・ウォーレルが奥田民生のアルバムに参加していたのは初めてしりました。

ヒップホップのサンプリングネタに端を発する、80年代後半以降のP-FUNK再評価ブームのなか、ジョージ・クリントンもブーツィーも新作をコンスタントにリリースしていましたが、セールス的にはサッパリだったのはある意味、しょうがないことだったのでしょう。

デ・ラ・ソウルファンカデリックの『Knee Deep』をサンプリングした『Me Myself and I 』でヒットを飛ばしていた同じ時期にジョージ・クリントンはプリンスのペイズリー・パーク・レコードから『The Cinderella Theory』をリリースしていました。この時はまだ『Knee Deep』が収録されている『Uncle Jam Wants You』はCDで再発されていませんでした。『Knee Deep』は15分もあり、『Me Myself and I 』でサンプリングされているジュニー・モリソンのシンセのリフはほとんど冒頭のでしか演奏されません。

ブーツィーはこの時期、テイ・トウワがいたディー・ライトにもゲストで参加していてPVにも出ていました。私が動くブーツィーを初めて見たのはディー・ライトのPVでした。

この本でも評価ブーム以降の新譜についはあまり好意的には書かれていません。私はブーツィーが「ズィラトロン」名義でリリースした『Lord of the Harvest』は意外と好きです。参加メンバーはビル・ラズウェル、バーニー・ウォーレル、バケット・ヘッド。このアルバムではファンクではなく、ほとんどインダストリアル・メタルです。ブーツィーのベースはいつも通りですが、バケット・ヘッドのギターがメインで全体のプロデュースはビル・ラズウェルがやっているようなのでそうなったのでは思います。当時はミニストリーナイン・インチ・ネイルズが売れ始めていた時期なので、時流に乗ろうとしたのかもしれません。この後、バケット・ヘッドガンズ・アンド・ローゼズに参加しています。

「パーラメンツ」の名前の由来はやっぱりタバコの銘柄からだったそうです。パーラメントのファーストアルバム『Osmium』はなぜサウンド的にはファンカデリックみたいなロックぽいものになったかといった長年の疑問もこの本で溶けました。それにしても、河出書房新社は思い切ったことをしますね。

P-FUNK