曽利文彦監督、山下智久主演の実写版『あしたのジョー』を見ました。
全く期待していなかったので、オープニングの昭和30~40年代の風景や泪橋やドヤ街のセットが意外に良くできていたので、「もしかしたら、面白いのではないか」と思ったりしました。
山下智久のジョーがドヤ街にふらりと現れて、ひと騒動起こし、少年院に入るまでが非常にテンポがよくスピィーディーで、ここまではまずまずでした。しかし、このスピーディーな展開が後にボディブローの様に効いてきます。
伊勢谷友介の力石徹との出会いくらいから話のスピードが鈍り始め、ジョーが少年院を出てからは非常にまったりとした感じになり、「ああ、やっぱり」とい感じになりました。
試合のシーンはアニメ版の出崎統の演出を参考にしているようにも見えましたが、後半の試合にシーンはスローモーションの連続で単調で緊張感がまるでありませんでした。マウスピースが飛ぶシーンは1回しかなかった気がします。
全体的な印象は、山下智久が主演ということになっていますが、力石徹役の伊勢谷友介の方が主役のように見えてしまっている不思議な映画でした。『あしたの力石』あるいは、『あしたのCASSHERN』といった感じでした。前半でジョーのキャラクターを丁寧に描いていなかったために、そういった印象になったのだと思います。
香里奈演じる白木葉子はそれなりにお嬢様ぽく見えていました。キャバ嬢という感じには少なくてもても見えませんでした。しかし、実は白木葉子もドヤ街出身というオリジナルの設定は余計ですね。この設定とドヤ街の再開発に関するエピソードのおかけで話の焦点がかなりボケてしまっています。あれでは見る人によってジョーはドヤ街の人のためにウルフ金串や力石と戦う話に見えてしまいます。
原作ではジョーは明日のためには戦いますが、残念ながら誰かのために戦うということはありません。ジョーが力石戦の前に白木葉子に向かって、「この戦いに金持ちも貧乏人もない」みたいなことを言っていますが、非常に違和感のあるシーンでした。
モロ師岡には少し期待していたのですが、当然、『キッズ・リターン』の一癖も二癖もある先輩ボクサーみたいな役でありませんでした。ドヤ街の気のいい定食屋のオヤジという役でした。杉本哲太がやっていたヤクザの親分役や少年院の看守役といったところをやらせた方が面白かったはず。実にもったいない。
白木幹之役は津川雅彦でした。津川雅彦は『サラリーマン金太郎』以降、この手の役が多いですね。(大会社の社長、会長役)今、テレ朝でやっている『バーテンダー』というドラマでも似たような役どころで出ていました。主役がジャーニーズの相葉雅紀というのもなんだか似ています。
TBSの製作の映画なのに放送席の解説者役が元WBC世界スーパーライト級チャンピオンの浜田剛史というのもちょっと不思議な感じでした。浜田剛史の現役時代の試合は日テレが放送していて、現在も浜田剛史は地上波では日テレのボクシング中継の解説にしかでていないはずです。そう言えば製作がTBSなのに亀田一家は出てきませんでした。これはちょっと残念でしたね。
とりあえず伊勢谷友介の体と香川照之の特殊メイクは一見の価値はあります。計量のシーンの伊勢谷友介の体はかなり凄いことになっていました。しかし、『十三人の刺客』で見せた演技に比べるかなり落ちる感じで、演出の大事さを改めて感じました。
力石が死んで、ジョーが行方不明になったときに、丹下段平が寂しさと虚しさからサンドバックを叩くシーンがあるのですが、このシーンの香川照之のパンチや体のキレが良くて驚きました。伊達にヘルシア緑茶を飲んでいないといった感じでした。
全体的な感じではかなり残念な感じの映画ではありますが、同じTBSの製作の映画としては『Space Battleshipヤマト』よりも少しはマシなきがしました。
ボクシング映画としては3月下旬に公開予定のマーク・ウォールバーグとクリスチャン・ベールの『ザ・ファイター』に期待ですね。