以前、TBSラジオ『Dig』で大根仁が紹介していた、永江朗の『セゾン文化は何を夢みた』を読んで見ました。
西武流通グループ、セゾングループが1980年代を中心に展開した文化事業について、20代をアール・ヴィヴァン、カンカンポアという西武の洋書店で働いていた永江朗が探っていくという内容の本です。
当時のアール・ヴィヴァン、リブロ、セゾン美術館、無印良品、西武百貨店文化事業部の関係者、責任者へのインタビューが中心になっていて、最終的にはセゾングループの会長だった堤清二/辻井喬のインタビューにまで辿りついています。
堤清二へのインタビューが圧倒的に面白いですね。セゾングループという巨大な流通グループの経営者でありながら、辻井喬として詩人、小説家としても活動し、学生時代は共産党員だった人なので、話がとにかく面白いですね。
父親である堤康次郎、弟である堤義明に対しては直接的に語っている部分は少ないのですがやはり複雑な感情があるようです。堤義明がJOCの会長をやったり西武ライオンズを持ったり、スポーツに力を入れていたのに対して堤清二はセゾン美術館などの文化事業に力を入れていたのが非常に対照的ですね。
大企業の経営者の絵の趣味と言うとわかり易い印象派みたいなものを好みそうですが、堤清二は現代美術が好きで、音楽はミニマルミュージックまで聞いたりするというのが凄いですね。ちなみに村上隆や奈良美智については面白とは感じるが迫力は感じないと言っいています。
海外の多くの有名高級ブランドを日本に輸入したけど、同じセーターに「イッセイ」とか「サンローラ」ンというラベルを貼ったら2割高く売れるということに疑問を感じたことから本当はノンブランドでやらなくてはと思い無印良品は生まれたそうです。
三軒茶屋の「ams西武」は(現在は西友)は緑屋という月賦百貨店(丸井みたいなもの)だったそうです。西武がクレジットカード事業に乗り出すときに買収し傘下に収め、「ams」というのはその時の名残で、「ams」は「旭川緑屋ショッピングセンター」だったそうです。
この本はとにかく脚注が多く、左ページの2割から3割が脚注で埋め尽くされているページはざらで、左ページが全部脚注というページもありました。脚注だけ読んでも面白いですね。現代美術については知ったかぶりができるようになれるかもしれません。
バブル崩壊とともに西武・セゾングループも崩壊してしまいましたが、「セゾン文化」で培われたものは「セゾン文化」担ってきた人たちや「セゾン文化」で育った人たちに受け継がれていくのかもしれないと永江朗は語っています。町田康も1ヶ月だけレストラン西武で働いていたことがあるそうです。
そう言えば私がが初めてP-FUNKの輸入盤のレコードを買ったのはWAVEでした。