ぶら~りネット探訪

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中島らもの『お父さんのバックドロップ』を読んだ

中島らもの『お父さんのバックドロップ』を久し振りに読みなおしてみました。この本を読みなおしてみようと思ったのはミッキー・ローク主演の『レスラー』を最近見たからです。 プロレスラーの父と子供の関係を扱ったと言う点は似ているのですが、基本手に『お父さんのバックドロップ』は子供向けに書かれた小説なのでハッピーエンドで心温まる物語になっています。また、中島らも自身がプロレスファンであったため、プロレスに対する愛情が非常に伝わってくる作品になっています。 しかし、プロレスが純粋なスポーツなのか筋書きのあるエンターティメントなのかという問題はかなり突っ込んで書かれています。『レスラー』では娘が父親のプロレスラーという職業に関して否定的に語るシーンはほとんどないのですが、この本では息子ははっきりとした勝ち負けのあるスポーツの世界から父親は逃げていると責め、そんな父親を尊敬できないとまで言います。 この父親は元アマレスの選手でオリンピックにも出たことがあるという設定になっていて、空手家に異種格闘技戦を挑むことになります。この本が発売されたのは1989年で、当時は総合格闘技はまだ影も形もない時代でした。第二次UWFが旗揚げしたのが1988年。プロレスラー最強幻想がまだあった時代ですね。プライドなどの総合格闘技でのプロレスラーの試合ぶりを見るとこの物語のようなことは現実には起こり得ないことでファンタジーだということを感じます。 『お父さんのバックドロップ』は2004年に宇梶剛士神木隆之介の主演で映画化されていますが、公開を前に中島らもは亡くなっています。 この本には他に3編の短編が入っています。『お父さんのカッパ落語』は売れない落語家のお父さんが、最後の勝負に挑む話です。この話は以前に陣内孝則が主演でドラマ化されていた記憶があります。わかぎえふも原作にはないライバルの漫才師役で出ていました。電車のホームで父親が息子を押して驚かしてシャレで済ますシーンは、立川談志毒蝮三太夫のエピソードを思い出します。 『お父さんのペット戦争』と『お父さんのロックンロール』はひたすら笑えるバカバカしい話でこれはこれで楽しめます。 表紙や挿絵はひさうちみちおが描いています。下田牛之助が鎖鎌を振りまわしている絵がたまりません。中島らもの本の装丁や挿絵はけっこうひさうちみちおはやっていますね。解説の夢枕獏も素晴らしいですね。『お父さんのバックドロップ』を読んだ後にキリンジの『悪玉』を聞いてみることをお勧めします。 お父さんのバックドロップ (集英社文庫)
お父さんのバックドロップ (集英社文庫)