ぶら~りネット探訪

音楽、競馬、映画などについて非常にテキトーにダラダラと綴っていくブログでございますですよ。

佐山聡の『ケーフェイ』を読んだ

またまた、プロレス関連の話題です。最近では極右の思想家、あるいは無類の甘党としても知られる初代タイガーマスクこと佐山聡の『ケーフェイ』を改めて読んでみました。 今回、私が読んだのは1990年の新装版でオリジナルは1985年に出版されていたようです。この本は初代タイガーマスクとして一世を風靡した佐山聡によるプロレスの暴露本であり、この後に佐山聡がつくりあげた格闘技シューティング(修斗)の指針となった本であり、現在の日本での総合格闘技の道筋を作った本とも言えます。 エピローグとプロローグはターザン山本が書いています。当時はまだターザン山本週刊プロレスの記者で山本隆名義になっています。山本隆はなかなか熱い文章を書いています。佐山聡を「ドラムを叩きながら、心の中ではチェロを弾く男」という言い回しで表現しているところはなかなか良いです。ちなみに、初めて佐山聡の前座の試合を見ていた自分自身を「新米の凡クラ記者」と書いています。 この本は佐山聡が第一次UWFを退団する前後の時期に書かれた本なのですが、前田日明をはじめとする当時のUWFのレスラーに関する批判めいた発言は全くありません。直接利害関係のない外人のプロディやハンセンについてはシューティングができないレスラーと言っています。 ロープに振ったり、ロープに飛んだり、コーナーポストに登る攻撃などの「プロレスお約束」については、はっきりと格闘技やスポーツの観点からありえない行為と切り捨てています。プロレスの有名な技(ブレーンバスター、16文キックや延髄斬り、卍固めなど)列挙して、これらの技はシューティングでは全く効かないと書いています。この中にはバックドロップはありませんでした。また、なぜ大手の読売新聞や朝日新聞がプロレスを取り扱わないかも懇切丁寧に説明してくれています。(K-1総合格闘技がブームのときも大手の新聞は扱ってはいませんでしたが) 初代タイガーマスクと言えば空中殺法とを織り交ぜた革新的なレスリングスタイルが印象深いのですが、佐山聡は当時、宙返りなどの練習はほとんどやっていなかったそうです。道場での練習の中心はキックとサブミッション。「あんな宙返り、練習らしい練習なんか、何もしていないんだよ。」と吐き捨てるように言ってます。この事が私はこの本で一番ショックでした。やっぱり、佐山聡は天才だと納得しました。 WWE(当時はWWF)のビンス・マクマホンの「プロレスとはスポーツと芸能の中間に位置するもの」という発言も取り上げられていて、日本のプロレスも遅かれ早かれそうなると言っているのは見事に的中しています。中森明菜がハンド・スピーカーをぶらさげてリングに上がってきたり、近藤真彦が対戦相手だったりと言うのはさすが時代を感じさせますが、ハッスルはまさに予言通り状況ですね。 佐山聡にとってタイガーマスクは「ただの布きれ」と完全に否定しています。本格的なシューティングや総合格闘技の認知度が高まったら、その時のファンは人気絶長期のタイガーマスクの試合を見たら、「なんだ!?アレは!」と笑うのでは書いていますが、さすがにそれはないと思いますよ。タイガーマスクのプロレスは今見ても面白いし素晴らしい。プロレスとシューティングなどの格闘技はあくまでも別物です。 ケーフェイ (NAYUTA BOOKS)
ケーフェイ (NAYUTA BOOKS)