ラジ・リ監督の『レ・ミゼラブル』を見ました。こま映画はヒュー・ジャックマンやアン・ハサウェイは出てこない方の『レ・ミゼラブル』です。
1998年のワールドカップでフランスが優勝するシーンから始まりますが、舞台は現代のモンフェルメイユ。ここはヴィクトル・ユーゴーの『レ・ミゼラブル』の舞台になった街で移民が多く住んでいて治安は良くない。この街の警察にステファンが新たに赴任して犯罪防止班に加わるところから始まります。犯罪防止班はリーダーのクリス(白人)、グワダ(黒人)、ステファン(白人)という構成で街のパトロールを行っている。クリスは粗暴で差別的で住民たちを威嚇、挑発するよな行為も平気で行う。そんな時、サーカスからライオンの赤ちゃんが盗まれる事件が発生、ステファンたちは盗んだ疑いのある少年を追い詰めるが、グワダがゴム弾で少年の顔を撃ってしまう。さらにその一部始終を何者かがドローンで撮影していた、というお話。
前半は犯罪防止班の日常とモンフェルメイユという街の複雑な事情を説明するような感じで、少し眠たい感じでしたが、ライオンの赤ちゃんが盗まれる事件が発生してからは物語は急加速して展開していき、一件落着めでたしめでたし思っていたら、物語は思わぬ展開になっていきラストを迎えます。劇映画ですがドキュメンタリー映画のようなリアリティと緊迫感がある映画でした。眠たい前半に実は伏線が仕込まれています。ジャンルやテーマは違うけど思いもよらない最後の展開は『パラサイト』を見たときに味わった気分に似ています。
モンフェルメイユの街の複雑な状況が正直分かりにくかったです。アフリカからの移民の中でも様々なグループがあったり、ロマ(ジプシー)のサーカス団やクリスと癒着している移民のヤクザみたいな連中も出てきたり。クリスは『デトロイト』や『スリー・ビルボード』に出てくるような差別警官に見えるけど、せいぜいクリスの横暴を動画で撮ろうとしていた少女のスマホを壊す程度で、実はそこまで悪くはない。『スリー・ビルボード』のサム・ロックウェルは改心していましたね。
ライオンの赤ちゃんが見つかって、犯人の少年がサーカスの団員にお仕置きとしてラインオンの檻に入れられてオスのでかいライオンに吠えられシーンがありました。MGM映画のオープニング以外で映画のなかでライオン吠えているのは見たのは久しぶりでした。
グワダはモンフェルメイユで生まれた移民の二世か三世の黒人なのですがボンヤリしていて粗暴なところがなんとなく桐谷健太に似ているように見えました。
音楽はあまりかからないのですがダフト・パンクではない感じのエレクトロニカ風のサントラで緊張感を煽るような感じ鳴っていました。
NHKではヴィクトル・ユーゴーのドラマ版の『レ・ミゼラブル』を放送しています。泉昌之の『アーム・ジョー』も思い出ししまいました。