ビル・ポーラッド監督、ジョン・キューザック、ポール・ダノ主演の『 ラブ & マーシー 終わらないメロディー』を見ました。
この映画はビーチ・ボーイズのリーダーだったブライアン・ウィルソンの伝記映画です。60年代の『ペット・サウンズ』のレコーディングを中心にしたエピソードのブライアン・ウィルソンをポール・ダノが演じ、80年代の精神科医ユージン・ランディに支配されたブライアン・ウィルソンをジョン・キューザックが演じています。
60年代と80年代のエピソードが交互に展開されていきます。60年のブライアン・ウィルソンは『ペット・サウンズ』のレコーディング、父やメンバーとの軋轢、レコード会社、他のミュージシャン(ビートルズ、フィル・スペクターなど)のプレッシャーから精神を病み、薬物に溺れ壊れてきます。
80年年代のブライアン・ウィルソンは治療の名のもとに精神科医ユージン・ランディによって支配、搾取されています。ブライアン・ウィルソンとユージン・ランディが偶然立ち寄った車の販売店でのメリンダ・レッドベターとの偶然の出会いがブライアン・ウィルソンの運命を大きく変えていきます。
今年はジミ・ヘンドリックス、JBといったミュージシャンの伝記映画が公開されてきました。今年、ブライアン・ウィルソン、ビーチ・ボーイズに特別思い入れがあるわけではありませんが公開されたミュージシャンの伝記の映画の中では一番面白く、印象深い映画でした。
ちなみに私が『ペット・サウンズ』(アルバム全部ではなくインストゥルメンタルのアルバムタイトル曲)を始めて聞いたのは山下達郎の『サウンド・ストリート』のエンディングでした。
『ペット・サウンズ』や『グッド・ヴァイブレーション』のレコーディングシーンがとにかく面白かったですね。ピアノの弦をヘアピンで叩いたり、犬をスタジオに連れてきたり、チェロのフレーズを何回も何回もテイクを重ねたり。『セッション』とは全く対極の面白さがありました。一つだけ残念だったのはテルミンの演奏がなかったことですね。
ブライアン・ウィルソンがフィル・スペクターを異常に意識していたのも面白かったですね。スタジオミュージシャンに褒められるときに、フィル・スペクターよりも凄いと言われたときが一番嬉しそうでした。また、『スマイル』のレコーディングが行き詰まって精神を病んできくると「フィル・スペクターが盗聴している!」と叫ぶシーンもありました。ちなみフィル・スペクターは女優を殺害し、現在塀の中で暮らしています。
精神科医ユージン・ランディとブライアン・ウィルソンの関係はMASAYAを中心としたホームオブハートとX JAPANのToshlの関係にちょっと似ているように思えました。
この映画を見て『ペット・サウンズ』改め聞き直してみたのですが、どうも私の趣味ではありませんでした。『素敵じゃないか』、『神のみぞ知る』、『ペット・サウンズ』はいい曲だと思いますよ。
ブライアン・ウィルソンに限らず、ロック・バンドでバンドのリーダーや中心人物が脱退したり、死んでしまうことはけっこうあります。ローリング・ストーンズのブライアン・ジョーンズ、ジェネシスのピーター・ガブリエル、ジョイ・ディビジョンのイアン・カーティス、ニルヴァーナのカート・コバーンなどなど。映画になったりすることもよくあります。私が映画にして欲しいのはピンク・フロイドのシド・バレットです。ドキュメンタリーにはなっているみたいですが、劇映画としてピンク・フロイドとシド・バレットの物語を見ていたいものです。
それにしてもブライアン・ウィルソンの生命力の強さには驚きます。ブライアン・ウィルソンは今も歌っています。