2020年2月22日に発売された都はるみのトリビュート・アルバム『都はるみを好きになった人 ~tribute to harumi miyako~』を聞いてみました。
トリビュート・アルバムは好きです。トリビュート・アルバムきポップス、ロックが圧倒的に多くてえ、演歌のトリビュート・アルバムは美空ひばりのものくらいしか聞いたことがありません。美空ひばりを演歌という狭いジャンルに括ってしまうのどうかとも思いますが。
都はるみは特別好きでよく聞いていたわけでもありません。『北の宿から』、『浪花恋しぐれ』は子供の頃なんとなく見ていた歌番組で聞いたような記憶があるくらいです。NHK-FMの坂本龍一の『サウンドストリート』に古舘伊知郎がゲスト出演したときに『浪花恋しぐれ』をリクエストしていた記憶があります。
1曲目のUAの『北の宿から』が凄すぎます。イントロがけっこう長くてUAが歌い出すまで何の曲か全く分かりませんでした。灰色で重たい冬の雲の様な電気ピアノの音がたまりません。鈴木正人という人がアレンジをやっていて、この人はベーシストでアレンジャーでプロデュースもやるそうです。鈴木正人がプロデュースしたたなかりかの『ジャパニーズ・ソングブック』は以前に聞いたことがあります。菊地成孔やレキシとも仕事をしていたことがあるそうなので、知らず知らずのうちに聞いていたみたいです。UAは演歌のカバーアルバムを作ったら面白いはず。
一青窈の『好きになった人』はとジョニ・ミッチェルのブルーのイメージでそうなんですが、ジョニ・ミッチェルを私はほとんど知れません。以前に一青窈が美空ひばりの『リンゴ追分』をカバーしたものを聞いたことがあります。そのときのアレンジに雰囲気が似ているような気はします。
怒髪天は名前は知っていましが、このアルバムの『涙の連絡船』で初めて聞きました。増子直純の演歌歌手のようで実はそうでもないい歌声と3コーラス目のギターのリフが良かったです。
民謡クルセイダーズを従えて『アラ見てたのね』を歌うのは浜野謙太。イントロのカウントはいつものJB風ですが、歌が始まると本物の民謡歌手のみたいで驚きました。浜野謙太は大河ドラマ『いだてん』で三波春夫として『東京五輪音頭』も歌っていました。浜野謙太には『ルパン音頭』もカバーしてもらいたい。
高橋洋子はエヴァンゲリオンの主題歌『残酷な天使のテーゼ』の人ですが『アンコ椿は恋の花』は同一人物とは思えませんでした。バックトラックはTR-808風のリズムボックスに重厚なコーラスとストリングで構成されていて、『星に願いを』みたいなフレーズも出てきます。
水谷八重子&Chageの『浪花恋しぐれ』は宴会の余興の域を出ない完成度ですが、そのチープさに味わいがあります。
このアルバムを聞いて驚くのは歌詞の世界観の古さと言うか男尊女卑的な歌詞。ここで歌われている歌詞の主人公は黙って男に尽くして、ひたすら耐えて、ひたすら男を待つ女の姿ばかり。『アンコ椿は恋の花』や『涙の連絡船』は他の土地からふらりととやってきた男にいいように遊ばれた田舎の女の歌にしか聞こえません。今だったらフェミニストの人たちから糾弾されそうな歌詞ばかり。
このアルバムの話ではありませんが、都はるみの『翳りゆく部屋』が好きです。ずっと抑えてた感じで歌っていて、サビで抑えていたもの爆発させるところが痺れます。凄く透明感のある歌声も素敵です。
都はるみを好きになった人 ~tribute to HARUMI MIYAKO~ - オムニバス, 大竹しのぶ, 吉岡治, 中村タイチ, 会原実希